音楽が、人の情緒面に大きな影響をおよぼすことはよく知られています。
また、身体機能にもさまざまな効果をもたらすことは古くから体験的に知られています。
しかし、音楽の生理的な側面についての体系的な研究が行なわれるようになったのは、20世紀に入ってからです。
今回は、これまでに明らかにされた音楽の生理的側面への影響について明らかにするために音楽と身体・生理的機能の関係について解説します!
音楽は、身体・生理的機能に何をもたらすか?|音楽の生理的側面を理解しよう!

Altschuler氏による身体への影響の研究
音楽が、人に与える作用について、音楽療法の観点からAltschuler(1948)氏は、以下の項目を発表しました。
- 新陳代謝、発汗、血圧、脈拍、内分泌、筋肉エネルギーに変化をもたらす
- 注意の集中、注意の範囲の拡大
- 行動の転換と変容
- 気分の変化(鼓舞的、鎮静的)
- 幻想的、知的側面の刺激
つまり、音楽は、身体的、生理的機能に影響を与えることに注目していました。
音楽の人体に対する影響の最初の記載
こうした音楽の身体への影響の研究は、はじめ呼吸、脈拍、血圧、運動などを観察することからはじめられました。
音楽の人体に対する影響を最初に記載したのは、Getry(1741、Dainowより)氏であるとされているが、系統的な研究は、Dogiel(1886、Charlesworthより)氏らでした。
彼は、音楽が、呼吸、血圧、心拍数、筋肉の緊張に影響を及ぼすことを観察しました。 また、Diserense(1926)は、それまでの報告を総括して、音楽には、代謝の亢進、筋力の増加や減少、呼吸数の変化、血圧、脈拍数の変化、種々の感覚閾値の変化などの作用があるとしています。
心の状態と電気生理学的な反応との関係の発見
その後、工学的な技術が発達したことにより、皮膚電気反応、筋電図、脳波など人体の電気的活動の測定が可能となり、心の状態と電気生理学的な反応との関係が明らかにされました。
その結果、音楽の生理的反応と情動反応との関係についてもより詳細な検討が行われていました。
これら一連の研究は、音楽の種類によってその反応の異なることを証明しています。
テンポの速い曲と遅い曲、リズミカルな曲とメロディックな曲とでは反応のあらわれ方に相違のあることは容易に想像されます。
同じ曲であっても、演奏の種類、たとえばソロで演奏されるのとオーケストラで演奏される場合では異なるし、楽器の種類でもその反応は異なります。
音楽に対する反応の個人差
さらに音楽に対する反応には個人差が大きく、また生理的反応の測定条件によっても、その時にあらわれる身体的反応に大きな差のあることが明らかになってきています。
音楽に対する素養や個人的な好みが問題になり、同じ個人でも、音楽を聞くときの心理的状態によってひきおこされる情緒的な反応が左右され、とくに実験的な調査では、その時の指示の仕方、雰囲袋などによって影響をうけます。
もともと、人間の情緒的活動と生理的活動は密接に関係していて、喜び、悲しみ、怒りなどの情緒的反応は、アドレナリンやノルアドレナリンなどの神経内分泌反応を介して脈拍、血圧、呼吸など生理的反応の変化をもたらします。
一方、脈拍、血圧など身体的な変化もまた情緒的反応に影響をおよぼす場合があり、どちらが原因で、どちらが結果であると断言することは困難な場合が多いです。
音楽は情緒面に対する作用が大きく、曲想によって人の情緒的反応は異なります。
したがって、曲想による情緒的反応の相違や個人差が、音楽の身体的反応を考える場合に問題とされることが多いです。
音楽の身体的影響の検討の注意点
最近は、これらの多くの要因を検討するために、高度な統計的な手法を用いた検討が行なわれるようになって、これら複雑な要因の関係が明らかにされつつあるが、統一された見解がえられるにはいたっていないのが現状です。
Dainow(1977)は、音楽の身体的影響の研究やその結果を検討するにあたっては、以下の点に注意が必要であることを強調しています。
- 調査時の指示の仕方(Instruction)
- 音楽の刺激の量(volume)
- 被験者の注意(attention)
- 実験初期の運動の抑制(suppres-sion of motor response)
- 音楽に関する知識や理解力
- 主観的評価と客観的評価、好き嫌い、影響をうけたか否かなど
音楽は身体的影響を与え得るが、個人差がある

いかがだったでしょうか。
音楽には、身体的影響を与え得るが、それには個人差が出てきてしまいます。
その点をしっかり理解して、治療や研究を行ってみてください。
最後までご覧いただきありがとうございます。