現代社会では、ストレスで苦しんでいる人たちが大勢いて、日本人の2人に1人がストレスを感じていると言われています。
ストレスの内容は人それぞれで、苦しみのレベルも違います。特に、度重なるストレスや疲れが原因で「うつ病」等の精神疾患を発症した「精神障がい者」などの苦しみは計り知れません。また知識や対人コミュニケーションの面で一般人より遅れていると診断された「知的障がい者」も苦労によるストレスを感じていることでしょう。
上記にあげた人達は、自分が抱える障がいで生き辛さを抱えています。
しかも、その生き辛さが原因で不調を被り、ストレスへと変化してしまうケースもあります。
それだけではありません。自分の障がいのせいで、周囲(家族)に負担を強いていると考えてしまい、自分を責めてしまう人もいます。そして、そのこともストレスへと繋がってしまうのです。
しかし、ストレスは「音楽療法」を用いることで解消される場合があります。今回の記事では、音楽療法の効果についてご紹介します。
今、ストレスで苦しんでいる人達が、記事を読んで、少しでも解決のヒントにしていただければ幸いです。
実体験丨ストレス解消に音楽療法をしたらこんな2つの効果があった。

音楽療法で得られる効果①「孤独」の解消
孤独についての解釈は沢山ありますが、ここでいう孤独の定義は「社会から切り離された状態」を指すものとします。
精神疾患を患ってしまった人にとって「何もしていない時間」ほど辛いものはありません。ただ寝転んでいるだけでも「何もしていない後ろめたさ」と無常に過ぎていく「時間の流れ」にストレスを感じます。誰とも関わることもせず、ただ淡々と時間が過ぎていくのを待つ。そんな「孤独」の時間は身体だけではなく、心も疲れさせます。
しかしこのような場合、音楽療法を用いることで、孤独解消の手助けを行うことができるのです。
孤独を解消するためには楽器演奏がおすすめ
「楽器演奏」は孤独解消にもってこいです。しかし、楽器演奏と言われると、すごくハードルが高いモノだと感じる人も中にはいるでしょう。
安心してください。堅苦しく考える必要はありません。
「ギター」や「ピアノ」のような仰々しいものではなくとも「リコーダー」や「鍵盤ハーモニカ」「カスタネット」のような簡単な楽器でも構いません。
演奏する楽器を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 比較的長く続けられる楽器を選ぶこと。
- 自分の負担にならないこと。
ストレスを和らげるために音楽療法を始めたのに、それが原因でストレスを感じていたのでは、本末転倒だからです。
楽器演奏が孤独の解消になる理由
楽器演奏が孤独の解消になる理由は2つあります。
- 人間の「運動機能」と「学習機能」を促進することができるから。
- 「演奏者」という役割を与えることができるから。
それぞれの理由について、以下で解説していきます。
運動機能と学習機能の促進が孤独の解消に繋がる理由
音楽による運動機能と学習機能の促進が孤独の解消に繋がる理由は、人間の感情面に好影響を与えることができるからです。
運動機能は演奏の際の手足や口の動きを統括し、学習機能は、楽器のどこを操作すれば、音が出るのかを考える際に使います。
このように「身体」と「脳」の働きが促進されると人間が持つ「自発性」と「情動」面が刺激されるのです。
そして、音楽演奏をしている状態を脳が「好ましい状態」だと思い込み、その思いが感情を司る「扁桃体」に影響を及ぼし、表情の回復や感情機能の回復効果を引き起こします。
孤独の原因は「感情の落ち込みによる自己肯定感の低下」にあると言われています。だからこそ、運動機能や学習機能を刺激させ、感情の部分にアプローチすることで、活発にさせることが必要なのです。
役割を与えることが孤独の解消に繋がる理由
音楽演奏による役割付与が孤独の解消に繋がる理由は、演奏をすることで「自分は何もしていない人間じゃない、何もできない人間じゃない」ことを気付かせることができるからです。
孤独を感じる原因の1つに「自分が何者なのか分からず、何をしたらいいのか分からない」ことが挙げられます。何もしていない時間を過ごすことほど、辛いことはありません。
しかし、楽器演奏はそんな悩みを解決する糸口を持っています。
楽器を演奏することで、その人は「何もしていない人」ではなく「楽器を演奏している人」になれるのです。
そういった「肩書き」は、自信を与えることにも繋がります。
音楽演奏をして劇的に何かが変わるわけではありませんが、自分で考え、音楽演奏をした事実はその人に自信を与えます。
そして、それが自分を救う一歩へと変わります。
最終的には「自分は何もしていない人間じゃない、何もできない人間じゃない」ことを気付かせることになるのです。
そして、それが自信の向上にも繋がります。
音楽演奏は、病気によって生じてしまった意欲の喪失とそこから生まれた孤独を回復するきっかけにも繋がっているのです。
筆者の体験談
私自身、月に何回かリコーダーで練習する時間を設けています。
指を動かし、息を吹き込み、音を奏でることは私に安心とやすらぎを与えてくれるのです。
また、できなかった部分が綺麗に吹けるようになると、なおその効果を実感します。
更に、自分が出した音色を聴くと、まるで音楽が私を励ましてくれているかのような感覚に陥ります。
音楽が私を歓迎してくれている。私はそんな音楽達のための「演奏者」なのだという実感を持てるのです。
「何かに取り組んでいる充実感」と「自分にもできることがある」そんな気持ちのもとで演奏をすることで、自己肯定感が高まり、自然と「孤独」に対する恐怖心がなくなっていました。
当事者家族が注意すること
当事者の傍についてあげて欲しいのです。
音楽療法は、誰か1人でも見守ってくれる人がいるだけで、効果が上がります。
だからこそ、家族には演奏を聴き、感想を述べて欲しいのです。
但し、演奏の上手い・下手は指摘しないでください。
演奏者がストレスで辛い状況の中にいるのにも関わらず頑張って取り組んだ事実を見て欲しいのです。
その励ましの声が音楽療法をより有効なものにしていきます。
音楽療法で得られる効果②能力が伸びる
音楽療法には潜在能力を伸ばす可能性を秘めています。
ストレスを溜め込む理由の1つに自分の「できない」ことばかりに目を向けて、嫌になってしまっている状態が挙げられます。
社会生活を営む上では、物事を考え判断する「思考能力」や人との関係を築く「適応能力」の分野が弱く苦しんでいる人達がいます。
特にこの2つの分野で大きなハンデを抱えているのが世間で言われている「知的障がい者」と呼ばれている人達です。
できない、ではなく「できる」ことに目を向けることで、ストレスを和らげる。
音楽療法にはそんな力があるのです。
能力を伸ばしていくために音楽鑑賞をおすすめする理由
音楽鑑賞は以下のような影響を脳に与えます。そして、それが能力促進へと繋がるのです。
①音を脳に伝える「知覚機能」を刺激する。
②音の内容を思い出させる「認知機能」を刺激する。
③歌を口ずさむことで「言語機能」と「行為・遂行機能」を刺激する。
それぞれの機能については、以下で解説します。
知覚機能が適応能力にもたらすもの
知覚機能とは「環境から得た情報を自分自身に結びつけて、処理するための能力」です。環境の変化に対して、論理的に考え、行動に移す役目を担っているのです。
認知機能が思考能力にもたらすもの
認知機能とは、「問題処理の際に自分の中から情報を整理し、引っ張り出す能力」のことです。思考能力における答えを導く手伝いをする役目を担っています。
言語機能が思考能力にもたらすもの
言語機能とは「問題処理のために引き出した答えを言葉で表現する能力」のことです。導き出した答えを言葉にすることで、自分の気持ちを明確に表します。
行為・遂行機能が適応能力にもたらすもの
行為・遂行機能とは「目標を設定し、それを計画、効果的に行動していくための能力」です。知覚機能によって処理された情報に対して、それをどんな目的で扱っていくのかを決めるための能力です。
音楽鑑賞における注意点
音楽鑑賞をする際の注意点は、自分の興味がある曲や好きな曲を、自分の都合の良いタイミングで聴くことです。
「治療の為に音楽を聴く」という考えはまず置いてください。
「~だから~する」という考えは「使命・義務」の意識を招き、かえって負担になるからです。
負担がかからない程度で、無理なく聴くことが大切なのです。
筆者の体験談
音楽療法のもと音楽を聴いてみると様々な発見がありました。
- 歌詞を理解する
- 歌詞の情景を想像する
- 歌詞を記憶する
- 歌詞に心地良さを感じる
このように今まで何気なく行っていた動作が、様々な順序を踏んでいることを知りました。
気付きを得ることで、自分が何をしているのかを理解する。そうすることでより深い効果を得ることができるのが音楽療法の醍醐味です。
このことに気付いた後、音楽鑑賞をすると以前よりも楽しんで音楽を聴けるようになりました。それまでは何の意識もせずに聴いていた音のひとつひとつが「作り手の思い」や「歌詞に込められた意味」を汲み取ることができるようになったからです。
当事者家族が注意すること
音楽療法の効果を過度に期待して焦らないことです。
音楽療法の効果は目には見え辛いものです。だからこそ、本当に影響があるのかどうか疑わしいと感じてしまいます。
しかし、焦って、必要以上に音楽を聴かせるのは駄目です。
音楽を聴くことが本人にとって負担となり、ストレスに繋がってしまうこともありえるからです。
「どんなに目には見えなくても、一歩一歩確実に成長していっている」
この言葉を胸に刻んだ上で、そっと見守っていて欲しいのです。
日々の小さな積み重ねが大きな結果を生む。その言葉を信じて下さい。
音楽の効果はゆっくりと効いていく

楽器演奏や音楽鑑賞でどんな効果が望めるのかを見ていきました
音楽療法とはストレスで生じた心身の障がいや機能不全を音楽の力で治していくものです。
但し劇的な回復が見込めるものではありません。
しかし、それでも諦めることなく実践していくことで、ストレスが少しずつ和らいでいっていることを忘れないで下さい。