音楽療法とは一口でいえば音楽による心理療法といえるが、欧米ではすでに臨床心理療法として確立され、音楽のもつ機能性を活用し病気の治療に用いる方法として定着しているのが現状といえます。
そこで複数回に渡って音楽療法について正しい理解を深めるために、今回は精神分裂病・障害者の音楽療法について紹介します。
精神分裂病・障害者の音楽療法│医療の場からみた音楽療法

精神分裂病の音楽療法
精神分裂病の音楽療法はその歴史も古いです。
Altshuler. I. Mは緊張型の分裂病患者に音楽療法を試みているが、同質の原理(Isoprinciple) すなわち患者の気分や精神テンポに合った音楽を使用するのが、音楽に対する精神病患者の反応を促進させるのに有効であることを見出しました。
この見解は極めて重要で今日の科学的音楽療法の基本原理としてつらぬかれているといってよいです。
ところで分裂病患者の音楽療法で目立つことは、鑑賞ではなく音楽の演奏とりわけ集団即興演奏および集団歌唱を治療の中心におくことでしょう。
Willmsは分裂病音楽療法として集団即興演奏を重視しているが、これは分裂病を成立させた最初の状況に患者を退行させ、そこでの体験を音楽活動という形で象徴的に再体験させ、そのうえ集団即興演奏での自由な対人交流、さらに楽器をコントロールする実感を通して、自我の強化をはかり、一方英・米においては行動療法的音楽療法がさかんであり、本邦では治療コーラスに関する研究がさかんです。
障害者の音楽療法
障害者のための音楽療法に関してはAlvin.J., Nordoff. P., Robbins C. らの功績がよく知られています。
Alvin.J. は障害者における対人コミュニケーションの支障に注目し、障害者に対する音楽のもつnonverbal communicationの重大な役割を追求しました。
先ず音に対する知覚体験を行ったうえで、音を発する楽器と、発する音との関係を楽器を自ら操作したり、触れたりして学習することにより、人間の内的状態に変化をもたらすことを明らかにしました。
Alvin. J. は音楽療法を通じて社会への適応力をめざす教育的段階へと移行して行く方法論を確立しました。
この際音楽のみのもつ純粋な機能性を十二分に活用した点が特筆されます。
Nordoff.P., Robbins. C. らも Alvin.J. とならんで障害者のための音楽療法を実践した功績が大きいです。
彼らによる音楽療法では音楽療法者の役割の中で何よりも即興性を優先した点が高く評価されます。
その特徴は障害者に対して間断なく音楽を媒介とするコミュニケーションをとることを目的に、音楽療法者が即興に徹し、音楽の中に融和するものとして注目されてよいです。
本邦では障害児に対し山松が音楽療法の実践を行っています。
楽器としてはピアノ、チェロ、サキソフォン、ギター、アコーディオン、ドラム、シンバル、ボンゴ、チャイムバー、スペリオパイプなどが適するとされ、自閉症に対し音楽療法の成果として共通してみられる変化に表情がやわらかになり、かつ豊かになります。
感動の発声が多くなる。 音楽に触発された接触要求、安堵感などが指摘されています。
別の症状についてもほか記事にて紹介

いかがだったでしょうか。
今回紹介した、精神分裂病や障害者への音楽療法の実践は本邦でもすすめられていますね。
別の症状についても、他の記事にて解説していますので、ぜひご覧くださいませ。
最後までご覧いただきありがとうございます。