音楽療法のHow To

心身症と音楽療法│治療法としての音楽療法を理解する

音楽療法とは一口でいえば音楽による心理療法といえるが、欧米ではすでに臨床心理療法として確立され、音楽のもつ機能性を活用し病気の治療に用いる方法として定着しているのが現状といえます。

そこで複数回に渡って音楽療法について正しい理解を深めるために、今回は心身症と音楽療法について紹介します。

心身症と音楽療法│治療法としての音楽療法を理解する

今日のストレス社会においては心理社会的ストレスに根ざした身体病としての心身症が増加の一途をたどっています。

心身症の症状と原因

心身症の代表として単純性肥満、消化性潰瘍、本態性高血圧症、気管支喘息、慢性関節リウマチ、過敏性腸症候群、座瘡、円形脱毛、神経性皮膚炎、狭心症、緊張性頭痛、不整脈、頻脈、月経痛、悪心、尿意頓数などがよく知られています。

一般的にこの種の病気にはその主要因の一つとして慢性のストレスをうみ出す状況がみられ、そのような状況では時間がたつにつれて機能上の不始衡状態が強固となり、器質的病変があらわれることもます。

alexithymia(失感情症)

心身症々例において神経症々例と異なる心理的特徴としてalexithymia(失感情症)という概念が知られています。

Alexithymiaはギリシャ語でaは欠乏、lexisは言語、thymosは感情を表わします。

Alexithymiaでは情動への気づきとそれに加えて言語的表現がおさえられている点が特徴とされ、表情が乏しくファンタジーや夢も貧弱であり、現実に医療の場で問題となるのは自己の心身の健康に関して無関心であることが問題となります。

しかしながら社会的には不適応を示すわけでなく、むしろ現実的で具体的な生活目標や仕事に関しては精力的にこなし、”過剰適応”と呼ばれてよい状態を示すことが多です。

これは脳の新皮質である知性の座と情動の座として存在する間脳・視床下部との間に、働きのうえで断絶がおきてしまい、そのために自分の感情とか自分の情動を感じとって表現する能力が著しく低下してしまうものとされています。

仕事中毒で働きばちにおちいっている社会人の中にかかるケースが存在し、ストレスへの気づきや心身の症状への気づきが乏しいため、重篤な身体病変におそわれることも少ないです。

テクノストレス

一方技術の革新によりOA化がすすみ、コンピュータ関連のテクノストレスにより心身症や心の病いにおちいる人々も最近加の一途をたどっています。

とくにソフト従事者プログラマーにその傾向が強く、これら心身症々例にも音楽療法が適用されています。

心身症と音楽療法

心身症に音楽療法が施行されることは少くなく、たとえば胃潰瘍と十二指腸潰瘍の治療を受けていた保養地で、リズム性をもたせることと合唱をふくむ音楽プログラムを複合使用して良い結果がえられたとするものや、気管支喘息の治療では感情誘発の特質を機械的な振動と結びつけ、呼吸練習によって良好な結果をもたらすことがあります。

循環器病(虚血性心臓病、高血圧症など)の予防と治療にリズム性をもたせることを利用する場合には、音楽を利用し音楽のリズムによって身体の動作全てを強化し、音楽を刺激要因として用いることも行われることがあります。

リズム性をもつことを経験したり、リズミカルな音楽刺激でもたらされる全身性の弛緩は、心身症の治療にも役立つことがあり、単なる運動療法よりも良い治療形式であることが少くないです。

リズム性をもたせることに似た一種の治療としてダンスによる治療も知られています。

慢性関節リウマチにも音楽療法が用いられることがあります。

他の心理療法が併用されることが多いが、数回にわたる作曲タイプの刺激を用い、抑圧された感情の発散やくつろぎが作曲により得られることがあり、セッションの最後に自律訓練法(心身のリラクセーション)が施行されます。

神経性食欲不振症は思春期に極度のやせと無月経をきたす代表的な心身症の一つとして知られているが、自己破壊が象徴的な本例に即興演奏にもとづく積極的な音楽療法が施行されることがあります。

即興演奏が自己イメージを改良するのに役立つ場合がみられます。

心理療法を選択するにあたっては、本人のストレス状況や精神葛藤はもとより性格をふくめた患者プロフィールを充分考慮した配慮が必要となり、優秀なセラピストの存在も欠くことができないものであります。

心身症に音楽療法が用いられる由縁は、音楽が感情領域にはいりこむことによって、心理療法の一構成要素として機能するに他なりません。

心身症における音楽療法の効果

神経症にも共通する部分が少くないが、心身症における音楽療法の効果として以下のことが考えられます。

  1. 抑圧された感情の表出
  2. 新しい自己イメージの形成
  3. 人間相互間での新しい行動

心身症患者に対する諸外国の治療と音楽

ここで心身症患者に対して諸外国で行われている治療を音楽との関連でまとめてみます。

諸外国で行われている治療を音楽

1 音楽と緊張緩和療法
 i)音楽と自律訓練法
  ・モーツァルトのディヴェルティメント第7番
  ・バッハのフーガなど
 ii) 音楽とバイオフィードバック療法
  ・音楽と筋電図フィードバック
  ・音楽と皮膚温フィードバック
 iii) 音楽と香り、色(芳香物質)
2 音楽と情動イメージ体験
3 音楽と絵画
4 唱歌療法
5 楽器演奏

音楽療法と他の心理療法との併用療法が多いことがわかります。

最も多いのは音楽療法と緊張緩和療法の併用です。

音楽療法と自律訓練法の併用が知られています。

これらはいずれも心身のリラクゼイションを目的に併用されるもので、使用曲としてたとえばモーツァルトのディヴェルティメント第7番、バッハのフーガなどがよく用いられています。

神経症にも適応されるが心身症では過換気症候群、片頭痛、自律神経失調症などに用いられています。

緊張緩和療法

次に緊張緩和療法としてバイオフィードバック療法が併用されることがあります。

慢性頭痛の代表として知られている緊張性頭痛に筋電図フィードバック法、片頭痛に皮膚温フィードバック法が併用されることが多いです。

さらに緊張緩和療法として音楽療法に加え、人間の嗅覚や視覚を利用して香りや色(芳香物質)を用いる治療も知られています。

その他音楽療法に加えて情動イメージ体験を用いる治療や音楽を聴いたあとで、聴いている際中に表出した感情をペインティングする音楽と絵画の併用療法も知られています。

また鑑賞療法ではなく合唱する活動的音楽療法も知られています。

気管支喘息やチックや頭痛症例などに外国では用いられています。

さらに楽器演奏も神経性食欲不振症に活用されています。

別症状についても他の記事にて紹介

いかがだったでしょうか。

心身症と音楽療法には深いつながりがあることをわかっていただけましたでしょうか。

別症状についても他の記事にて紹介していますので、ぜひご覧くださいませ。

最後までご覧いただきありがとうございます。