人間の発達にとって音楽の影響は大きいです。 特に、幼児から始まる幼稚園・保育園ならびに学校における音楽教育では、子ども達の健全な情緒や精神の発達にとって、音楽は有用な教育の手段として成果を上げています。
また、それについて多くの研究が報告されています。
その一方では、小児医療の人間化 humanizationを求めて、心身障害の治療ばかりでなく、難病の子ども達の病棟生活のアメニティを高めるためにも音楽が利用されています。
しかしながら、小児の音楽療法となるとまだその定義づけは充分ではありません。
胎児・乳児と音楽の関係となると、研究は勿論のこと観察も充分ではありません。
当然のことであるが、子守歌が乳児と母親との心の絆の形成に良いとか、さらには児の精神発達に良い影響を与える可能性は考られています。 しかし、歌そのものの文学的研究はみられても、心理学的な研究あるいは小児科学的な研究は殆んどありません。
あるのは、音、音声あるいは音楽などに対する、胎児・新生児の反応Auditory Responsesの研究のみのようです。
こういった研究の成果は、胎児・新生児の特性を考えてみれば、音楽療法、さらにはその基盤となる音楽の医学・生物学的な意義を検討する有用な手段となり得るのです。
新生児のAuditory Responses
胎児と異って新生児の音、音声に対する反応の研究の成果の発表は多いです。
しかし、残念ながら音楽となると決して多くないです。 新生児のAuditory Responsesはいろいろなパターンをとります。 主な点を整理すると下記の通りです。
新生児のAuditory Responses (1) 聴覚器の特性による反応
新生児の中耳の構造は柔らく弱いので、低い方の音によく反応することが知られています。 しかしながら、男性より女性の声に対する反応がよいという現象もみれます。
これは、胎生期に耳にした母親の声を記憶しているためと考えられます。
新生児のAuditory Responses (2)電気生理学的な反応
脳波計(EEG)、心電図(ECG)、心拍数測定器などの電気生理学的な検査法によって、新生児には多彩なAuditory Responsesがみられることが知られています。 音刺激による心拍変動の対数値と音波圧の強さとは一次関係にあることが示されています。 また、新生児にみられる各種反射、すなわち筋肉の運動反応も音によって発現します。 また、音刺激で脳波に変化のおこることも知られています。 しかし、これらの所見の解析は不充分です。
新生児のAuditory Responses (3) 行動反応 SONS
音に対して新生児はいろいろな行動の反応を示します。 主なものは下記の通りです。
- 開いている目をしばたたく、閉じている目をかたくする。
- 編幹を急にねじる、四肢または顔、片方または両方を急にねじる。
- 前額一部の皮膚を動かす、またはしわをよせる。
- 眼瞼を開く、または閉じる。
- 目の位置を固定する、または音源にむける。
- 頭部をまわす。
- 口を開く、閉じる、ねじる、さらには泣きそうになる。
- 体と四肢の動きが、夫々または同時におそくなる
などとなります。
とくに(1)と(2)の反応が多いです。さらには、強い音ではモロー反射やそれに準ずる驚愕反射がみられます。
こういった反応は“Spontenous Movement”であって、積極的な意義をつけられないとする立場と、顔の反応が微笑に似るとか積極的な立場をとる場合とがあるが、今後の検討にのこされます。
新生児は音に対して様々な反応を示す
いかがだったでしょうか。
新生児は、胎児と比べてより様々な反応を示すことがわかりましたね。
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