なんとなく気分が落ち込んでいる時、音楽を聴いて気持ちが癒された、という経験はありませんでしょうか?
そのような音楽によるリラックス効果は、古くから経験的に知られていました。
こうした音楽の力を意図的に利用して、心身の回復を図っていく治療法を「音楽療法」といいます。
欧米などでは、専門の音楽療法士が存在し、病院などの医療施設で患者さんの心のケアに当たっています。
今回の記事では、そんな音楽療法の驚くべき効果や実践方法を解説したいと思います!
海外では進んでいる音楽療法!その効果とは?

音楽の特性
音楽は多様な要素で構成されており、リズムやテンポ、メロディー、ピッチ(音の高さ)、歌詞のメッセージ性などいろいろな成分があります。
また音楽には大きくなったり小さくなったり、強くなったり弱くなったりする連続的な揺れである「ゆらぎ」も含まれています。
このf/1と呼ばれる「ゆらぎ」は人の心臓の鼓動、川のせせらぎ、虫の声などに存在するもので、これが音楽を通して耳に入ってくることで人の脳に働きかけ、感情を安定させてくれるのです。
こうした音楽の特性は楽曲によって様々に異なり、どんな音楽を聴くかによって心身に与える影響も違ってきます。
音楽療法の効果
人体の機能を調整している神経のことを「自律神経」と呼びます。
自律神経には昼間の活動時間帯に優位になる「交感神経」と夜間の休息時間帯に優位になる「副交感神経」の2つがあります。この2つの自律神経のバランスが乱れることにより起こる病気が「自律神経失調症」です。
この病気は交感神経優位の状態が長く続くことが原因でなる場合が多いのですが、音楽を聴くことによって副交感神経の機能を意図的に誘導できることがわかってきました。
つまり、人は音楽を聴くだけでいつでもリラックスした精神状態に入ることができるということです。
音楽療法の2つの種類
音楽療法には大きく分けて2つの種類があります。
① 受動的音楽療法
音楽に集中して聴き入ることを中心にやる療法。
② 能動的音楽療法
歌ったり、楽器を演奏したりして、能動的に音楽を楽しむ療法。
音楽療法の種類その①:受動的音楽療法
その人に合った音楽を集中して聴き入る療法を「受動的音楽療法」といいます。
聴く音楽については特にこれがいいというものはありません。
その人が心地いいと感じる音楽を選ぶことが大切です。
音楽療法士の指導の下、過去の経験やデータなどからその人に適切な音楽が選ばれます。
音楽療法の種類その②:能動的音楽療法
能動的音楽療法では、歌を歌ったり、楽器を演奏したり、患者さんに積極的に音楽を楽しんでもらいます。
音楽を聴くだけの受動的音楽療法よりも効果を得やすいのがポイントです。
音楽によるリラックス効果があるのはもちろんのこと、患者さんどうしのコミュニケーションを通じて得られる作業療法的な効果もあります。
聴く音楽はどう選ぶ?
一般的な見解としてはテンポが速い曲を聴くと、気分が高揚して元気になり、ゆったりとしてテンポの遅い曲を聴くと、気分が穏やかになるとされています。
しかしその人の好き嫌いや文化的な背景、興味の有無などにより、同じ音楽を聴いていても受ける印象は様々です。
そのため音楽が人に及ぼす基本的な特徴や傾向は見出せるものの、「誰にでも効果的な音楽」というものは存在しないといっていいでしょう。
しかしながら、その時の自分の気持ちに合った音楽を聴くことが効果的であるということは言えるかもしれません。これを「同質の原理」といいます。
例えば、気分が落ち込んでいればスローテンポの音楽を聴き、気分が回復するに従いテンポの速い曲を聴くようにするという方法が考えられます。
音楽の聴き方
音楽療法としての効果を期待するなら、音楽療法用に選んだCDをある期間に集中して聴くという方法がおすすめです。
一日のうちに30分から1時間は集中して音楽を聴く時間をつくるのが良いでしょう。音楽を聴くための媒体としてスピーカー、イヤフォン、ヘッドフォンなどがありますが、周りの雑音を遮断して聴いた方が効果は高いとされるので、スピーカーで聴くよりはヘッドフォンやイヤフォンで聴くようにした方が良いと思います(耳を覆うタイプのヘッドフォンがさらにおすすめ)。
なお、同じ音楽ばかり聴いていると飽きてしまうため、音楽療法用のCDは複数枚用意しておきましょう。
音楽療法を有効活用して、QOLを高めよう!

今回の記事では音楽療法の効果についてご紹介しました。音楽は人の脳の広い領域に直接働きかけて、快楽ホルモンの「ドーパミン」を分泌させることがわかっています。
そのため音楽療法は生活習慣病を始めとしたあらゆる疾患に効果的とされており、費用もかからないため、是非日常生活に取り入れたい治療法です。
聴くだけでも効果がありますが、音楽を通じた周囲の人とのコミュニケーション効果も期待できます。そんな「音楽療法」、あなたも気楽に試してみませんか?