「音楽療法」とは音楽の持つ力を利用して、人間の心身に癒しをもたらす取り組みのことです。
その歴史は古く、海外では第二次世界大戦以後に本格的に導入されました。
日本と比べると、歴史も古く、また、独自の着眼点で実施されています。
今回の記事では、海外の音楽療法で取り入れられている視点について、3つ紹介していきます。
海外の音楽療法で取り入れられている3つの視点

①単なる治療法だけにはとどまらない
海外における音楽療法の位置づけは、単なる治療法だけにとどまってはいません。
日本では、介護予防や身体のリハビリ、認知症緩和に重きをおくことがほとんどですが、海外では一概にそうとも言い切れないのです。
ホスピスケアとしても使われている
日本ではあまり見られていませんが、海外ではホスピス(終末医療)の場でも音楽療法が導入されています。
余命幾ばくも無い人々に対して、最期の時間をできる限りより良い状態で過ごしてもらいたいために行われているのです。
治療法の定義が「健康を回復させるために行う」ものだとすれば、海外の音楽療法はこの定義と外れているように感じられます。
長く生きられない人々に対して「健康」ではなく、「思い出」を優先させるのは治療法ではないと思われる人もいるでしょう。
しかし、そういった既成の概念に縛られない、新しい可能性を模索しているのが海外の音楽療法の在り方なのです。
現にアメリカでは、亡くなる手前の約45%の人々が利用しています。このことからも、海外の枠組みにとらわれないやり方は人々に受け入れられていることが読み取れるのです。
②情報交換の場がある
海外は日本と比べると音楽療法に対する情報交換の場があります。
日本では、まだまだ「音楽療法士」として活躍する場が少ないです。そもそも、音楽療法士の資格が正規ではなく、医療や福祉従事者が自分のスキルアップのために取る、いわゆる「補助的」な要素が大部分を占めているからです。
しかし、海外では違います。ドイツでは音楽療法士は「国家資格」として認定されており、アメリカ、イギリス、北欧でも音楽療法が活発です。
海外の音楽療法に対する姿勢がよく分かるのが「世界音楽療法大会」です。
世界音楽療法大会では音楽療法の認知度を広めることができる
世界音楽療法大会とは、2年に1回開かれる音楽療法の大会のことです。
この大会では世界中の音楽療法士が集まり、情報公開や研究発表を行います。
音楽療法士がきちんと活躍できる機会があることは、それだけ音楽療法に対する熱が高いことが伺えるのです。
音楽療法を「限られた人しか扱えない閉鎖的な学問」として捉えるのではなく「誰でも扱える開かれた学問」にすることで、認知度を広めていく役目も兼ねています。
③「個人」に寄り添う
海外では全体ではなく個人を意識しています。日本のように「人と足並みを揃えることを善とする」のではなく、1人1人に注目することを目的としています。
ただし、マンツーマンでやるだけではなく、集団にいる中でも、きちんと個人に注目し、課題を把握していくことを目標としているのです。
「個人」に寄り添うことで信頼関係が生まれる
各々課題を把握し、ケアしてくことで、音楽療法を実施する側とされる側との間に信頼関係を築くことができます。
ただ、一方的に行うだけでは、充分な効果は見込めません。けれども、信頼関係を得て、互いに主張する機会が増えていくことで、質の高い音楽療法を実施していけることにも繋がるのです。
「やらされている」のではなく「やっている」という意識が生まれてくると、もたらされる効果も随分違ってきます。
広い視野を持って音楽療法に取り組もう

海外の音楽療法で取り入れられている視点を3つの視点に分けて紹介しました。
このことだけでも、日本が海外に比べると、音楽療法の面では遅れていることが分かります。
この遅れをカバーするためには、各々個人が広い視野で音楽療法に取り組む姿勢を持つことです。
「誰か」ではなく「自分」から動くことで、真に音楽療法を理解するための足掛かりにもなります。