テレビから聞こえてくる聞きなれた曲、誰の作曲で何という曲かご存じですか?意外にもクラシック曲が多いのです。
今回は流行りの曲と、芸術の違いについてお話しましょう。
音楽療法士として高齢者・知的・身体・精神など様々な障がいをお持ちの方々に個人・施設での集団セッションをさせて頂いております。個人セッションでは問題ないのですが、集団セッションでは選曲に困ることがあります。
流行りの曲

去年流行った曲を覚えておられますか?
ここ数年で多くの曲が流行りましたが、思い出せません。確かに個人的には一生忘れられない曲になる場合があります。(この場合は、個人セッションで有効な曲になります。)
これらの曲が10年後・50年後多くの方々の記憶に残っているでしょうか?
- 今流行りの曲は世界中に受け入れられていますか?
- 年代関係なく受け入れられていますか?
- 多くの方がご存じですか?
- 多くの方と(年齢・国・環境などを超えて)共有できますか?
芸術といわれる曲

例えばジャズでも使用されている曲に中にバッハの曲が多いです。バッハは1685年~1750年の作曲家で、多くの曲を作曲しています。
でも全てが残っている訳ではありません。長年の間、残って現代の人々に受け入れられている曲は僅かです。残っているこれらの曲は地域・国・年代に関わらず受け入れられています。
ちなみに「主よ人の喜びよ望みよ」は、誰が作曲して何という曲か知らないけど、聴いたことあるという曲です。コーマーシャルや教育の場、バックグラウンドミュージックなどで耳にする機会が多い曲です。
モーツァルトは1756年~1791年ですが、ピアノを学習する方にとって必須だと思います。世界中の学習者、世界中の演奏者、世界中の鑑賞者などが230年経っても学習し演奏し鑑賞しています。
ベートーヴェンは1770年~1827年です。「ジャジャジャジャーン」で有名な「交響曲5番運命」、「エリーゼのために」は皆さん良くご存じと思います。バラエティー番組で盛り上げる時は「ピアノ協奏曲5番皇帝」がしょっちゅう使用されています。
チャイコフスキーは1840年~1893年。彼の作品は本当に良く使用されています。携帯電話のCMでは「くるみ割り人形」から「金平糖の踊り」、クイズ番組で盛り上げる時に使用される「ピアノ協奏曲1番」等、何の曲か知らないけど、聴いたことがあると思います。
「あっ!この曲、運動会で走る時かかってる」と子供たちが喜ぶのは、ネッケ作曲「クシコスポスト」やカバレフスキー作曲「道化師のギャロップ」。行進ではヨーゼフ・フランツ・ワーグナー作曲「双頭の鷲の旗の下に」やカール・タイケ作曲「旧友」等です。
チャイコフスキー作曲「くるみ割り人形」から「行進曲」は「学校で掃除の時に流れてる」と言う児童がいました。
これらの作曲者でも残った曲と忘れられた曲があります。
100年・200年もの長きに渡って世界中の多くの人々に受け入れられた曲、学ぶに値する曲、学んでも学んでもここで終わりでなく追求し続けるに値するモノ、何か知らないけど「動きたくなる」「悲しくなる」「気持ちが晴れ晴れする」「懐かしく思い出される」等、これらの現象が年齢・国・環境に関わらず心に影響を及ぼす、それが「芸術」なのです。
この違いを知って頂ければ有難いです。
最近テレビのコマーシャルや番組で耳にした曲
- 某ガス会社の乾燥機
ショパン作曲「雨だれ」 - 某日曜日の番組
チャイコフスキー作曲「ピアノ協奏曲1番」
ベートーヴェン作曲「ピアノ協奏曲5番」
ラフマニノフ作曲「ピアノ協奏曲1番」
最後に
私自身、セッション中でリクエストを伺い取り入れようと思うのですが、聴いて好きな曲と、療法として使える曲では差があるようです。最近の曲はテンポが速いので発語には適さないと思います。(あくまで高齢者や障がいのある方の場合です。)
単に好きならカラオケで楽しんでいただけます。発語が不明瞭でも楽しめたら・歌った気分を満足できればそれはそれで良いと思います。療法では発語の発声、呼吸、口唇の動き、表情筋の動き、その他多くの観察をし、促進することを療法の目的とするので、流行りの曲はやや不向きと私は思います。
音楽リクリエーションとしてなら十分と思いますが、「音楽の持つ生理的・心理的・社会的働きを応用し、心身の障がいの軽減回復・機能の維持改善・生活の質(QOL)の向上、問題となる行動の変容など目的のもと、意図的に計画的に行われる治療プロセスを実践する」音楽療法士としては、選曲には注意を払います。