音楽の心理的作用は、音楽が古来「魂の薬」として用いられた長い歴史と、音楽の持つ摩訶不思議な能力とに関わっています。
今回は音楽のもつ励まし、慰めの作用を通じて、より音楽療法の理解をしてもらおうと思いますので、ぜひ最後まで御覧ください!
音楽の励まし、慰めの作用を紐解く|音楽の心理的作用を理解する!

音楽に求める励まし、慰め
心理療法の作用機転として、井村恒郎は4つの要素を挙げています。
①支持、②発散、③洞察、④訓練、の4つがそれです。
①の支持で一番必要なことは、相手をよく理解し、相手の話をよく聴くことに尽きます。
自分を理解してくれる他人がいること、その人には心の中にあることを何でも話せること、そして適切な助言が得られ、激励が得られること、などは、悩む心にとって掛け替えのない支えになります。
ですから、励まし、慰めは、心理療法における最も基本的な面接技術に属します。
私達は音楽を聴くとき、この励まし、慰めを音楽に求めていることに気付きます。
つまり音楽は私達の心の治療にとって最も基本的な働きを、知らず知らずのうちにしてくれていると言えましょう。
音楽療法での励まし、慰め
この励まし、慰めは、音楽療法の立場で考えるとき、2つの異なる仕方で現われてきます。
そのうちの1つは、ここではただ名前を挙げるだけにとどめ、他の1つについて詳しく述べることにします。
その1つとは、音楽によって体の生理的機能が調整され、それによって自然に体の活力が回復される場合です
これについては後の項で取り上げます。
他の1つは、ここで述べようとしている音楽のメッセージ機能です。
音楽のメッセージ機能
音楽作品は、特にクラシック音楽の場合、単に美しく、感動的な作品であるだけでなく、その音楽が持つ作曲家の聴衆に対するメッセージを否定できません。
しかしこのメッセージについて誤解があってはならないのは、筆者が言うメッセージとは、必ずしも作曲家が表現しようと意図したものではないということです。
それは作曲家が一所懸命作品を書いているうちに、何かほろっとそのはずではなく出てきてしまったような、つまり誰にも言わない彼の本音の心情部分のことです。
ですからそれは決して具体的な思想とか感情ではなく、作品が生まれたその頃、作曲家が直面していた精神的背景であるとでも言った方がよいかも知れません。
しかしそれは、とてつもなく大きなメッセージです。
絶対音楽でのメッセージの現れ
またそれは表題音楽より、絶対音楽と言われる抽象的でかつ厳格な形式美を追い求めた音楽の場合に、よく表れている気がします。
何故そうなのか。
それはおそらく、表題音楽の場合は、作曲家があまりにもその表題の気分や雰囲気の表現に熱中するあまり、作曲家の精神的背景が入り込む余地が無くなるためではないかと考えられます。
例えばドビュッシーの音楽は、印象主義的な世界の表現にこの上なく成功しています。
しかしその音楽は、音楽療法的なメッセージという面からみたとき、そのインパクトは残念ながら低いと言わざるを得ません。
では、そのメッセージとは具体的には何なのでしょうか。
それは例えばショパンのプレリュードからは、結核の罹患を知った彼の精神的苦悩が余すところなく伝わってくるように、またマーラーの第9交響曲からは、死を予感した彼の情感が感じられるように、曲の中にその曲を書いていた作曲家の魂の呻吟が自然に出てくることを指します。
音楽にはこのように、悩み呻吟した作曲家の魂の叫びが表現されています。それ故に悩みを持つ病者にとっては、その音楽は深い意味で同質になり得るのです。
そしてそのような音楽に向き合うとき、音楽は、どんな治療者にも増して、深く、かつ心から病気の苦しみや死の恐怖に対して励まし、慰めてくれる語り手と聴き手になってくれるのです。
それはまさにカタルシスそのものなのです。音楽の心理的影響についてはもっと語るべきことがあると思います。
音楽療法でも励まし、慰め効果は有効

いかがだったでしょうか。
音楽に励まし、慰め効果があることはなんとなくわかる気がします。
その他の音楽による感情への影響については、別の記事にて詳しく説明しますので、ぜひご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございます。