音楽療法を行うには、その対象と目的を明確にすることで効果を発揮します。
音楽療法の対象は、一般に、障害や病気を持つ人達です。
それでは、目的とは、一体何でしょうか。
今回は、音楽と人類の関係を紹介しつつ、音楽療法の目的を解説します。
【超初心者向け】音楽療法は”治療”なのか?│音楽療法の目的から徹底解説

基本的に、音楽療法の目的は、障害や病気を持つ人達の症状や機能の低下を少しでも緩和し、またその人達が味わう苦しみや悩みをできるだけ軽減し、彼らの生きにくさのもとを除去することになります。
「音楽療法で”治療”する」は、正しいか?
一旦病気になると、その症状や障害はなかなか軽減できないのが現実の姿です。
そのために、治療という言葉を使わない方がよいという意見もあります。
治療という言葉の代わりに、治療を援助するというような、一段引き下がった表現を用いる場合も多いようです。
また自己実現を促すという表現や、QOL(quality of life 生活の質)の改善を目指すという言葉が用いられることもあります。
自己実現は、障害者に限らず全ての人間に共通する人生の目的です。
障害を持つ人はとりわけその点が達成されにくいということで、その言葉が強調されますし、QOLの方は、障害を持つ人がその障害の故に日常生活において様々な生活上の制約を受け易く、忍従と屈辱を強いられがちであることから、その人達の生活の質を少しでも高めたいという願いが込められています。
SST (social skill training 生活技能訓練)という概念も、成人の音楽療法を行うときには知っておかなければなりません。
充分な社会的経験や訓練が得られないうちに発病した精神分裂病患者の場合には、病気がある程度改善して社会復帰を目指す段になって、自立のための生活技術や対人関係の具体的なスキルを身につけていない場合が多く、そのような技術を身につけてもらうことが欠かせない訓練課題となります。
それによって不必要な心配や不安が避けられ、社会適応が良好になる結果、再発が予防されることが多いからです。
音楽は、人類の精神安定剤
音楽療法を、音楽の本来の目的活動だと考える人達もいます。
彼らは、心の衛生は、遠い昔から音楽の一つの機能であったと考えています。
そして、私達が日常の音楽を楽しんでいる行為の中に、既に私達の心の健康を支える大切な役割があると信じます。
場合によっては心の病を予防することも出来ると考えます。
この点は現在、科学的には証明されている訳ではありません。
たとえ音楽が病気を予防したとしても、それはどこにも証拠を残さないでしょうし、逆に、音楽を用いたにも拘わらず病気が起こった場合には、音楽療法の無能性の方が問題にされてしまうでしょう。
しかし音楽は、私たちにとって間違いなく精神安定剤です。
このことは精神分裂病患者さん達の発言の中にしばしば聴き取れます。
再発の引き金となるような心理的危機に直面したとき、どれ程彼らが音楽によって救われているかは、彼らの言葉が明らかにしてくれます。
彼らは片時もラジカセを離さず音楽を聴いているのです。
音楽療法は、音楽教育の中に取り入れられるべき
音楽療法のもう1つの新しい考え方は、音楽療法が音楽教育の中に取り入れられる必要があるという考え方です。
第1の考え方とも関連しますが、音楽教育は、決して音楽を教えることに終始するのではなく、人間の形成や人格の豊かさに深く関わる教育です。
その意味で音楽療法的な実践が当然加味されてよいと考えられています。
教育の現場で児童の行動の問題が様々に取り沙汰されている現状では、改めて音楽の時間の意味を考えることが必要でしょうし、心の衛生の面から、音楽療法的観点を導入することは、決して時代への逆行ではないと思われます。
音楽療法の目的は、治療とは少し異なる

いかがだったでしょうか。
改めて、音楽療法の目的は、障害や病気を持つ人達の症状や機能の低下を少しでも緩和し、またその人達が味わう苦しみや悩みをできるだけ軽減し、彼らの生きにくさのもとを除去することです。
ただ、音楽と人類との密接な関係から考察すると、音楽療法は治療とは少し違うものかもしれませんね。
最後までご覧いただきありがとうございます。