自閉症を持っていると、特性上、対人関係などでストレスを感じやすいかと思います。
自閉症ではない方と比べて、自閉症があると障がい特性としてコミュニケーションが苦手ということもあり対人関係でより多くのストレスを受けることになります。
こうしたストレスの緩和に良いとされるのが「音楽療法」です。
今回は、自閉症の方に音楽療法を行うと、どのような効果があるのかをお伝えします。
また、音楽療法におすすめの楽器もご紹介します。
音楽療法でコミュニケーション改善？自閉症と音楽療法の関係性
音楽療法とは？
音楽療法とは、音楽を「障がいの回復・改善・機能の維持、生活の質の向上」といった幅広い面に対して活用していくことを指します。
発達障害に対する音楽療法において、音楽には大きく分けて３つの働きがあります。
音楽療法の働き①：心理的働き
音楽には情動(身体の動き等を伴う一時的な感情の激しい動き)を発散させる効果や、リラクゼーション効果があります。
また、気分転換になることや、物事に意欲的になるといった効果が期待できます。
音楽療法の働き②：生理的働き
音楽は長期記憶と結びつきやすいという側面があります。
また、呼吸、脈拍、血流の変化特に脳の血流を促進させることが分かっています。
音楽療法の働き③：社会的働き
音楽は、他の人との交流を促進し、集団に参加しようとする意欲を育みます。
上記の効能が、障がいのある方の生活の質を向上させるのです。
自閉症で音楽療法をするメリット
自閉症の方に音楽療法をする上で、どのようなメリットがあるのでしょうか。
先ほどの効能でも触れたものですが、ここではより詳しく解説していきます。
メリット①：リラックスできる
音楽の持つ「癒し」の力は、自閉症の方のリラクゼーションにうってつけです。
ジャンルを問わず、聴きたいと思った音楽を聴くことで、身体の緊張がほぐれると言われています。
これは自閉症の方のみならず誰にでも言えることで、ご家族の方も日頃疲れてしまった時に好きな音楽を聴いてリラックスすることが大切です。
メリット②：人との関わり方が積極的になる
自閉症を持っていると、人とのコミュニケーションに苦手意識が芽生えやすく、どうしても人との関わりに消極的になりがちです。
音楽を通して、他者とのコミュニケーションをとることで、少しずつ苦手意識が薄れ、人との関わり方が積極的になることが期待できます。
メリット③：気持ちを切り替えることが出来る
イライラしていたり、落ち着かなかったりする時に音楽を聴くことで、気持ちを切り替えることが出来ます。
これを応用すれば、集中力の向上に繋がります。
音楽療法を行った自閉症の方の脳の変化
音楽療法は脳にも良い影響を与えるようです。
カナダのモントリオール大学のシャルダ氏ほかの研究では、６歳から１２歳の子供を対象として半数は音楽療法を行い、もう半数は別の療法を試みています。
この研究で、音楽療法を行ったグループは聴覚に関わる脳の領域と、運動に関わる脳の領域のネットワーク接続が増加することが分かりました。
これは社会的なコミュニケーションの改善に繋がることです。
この研究ではほかにも、音楽療法のグループに社会的な反応の変化や、家族との生活の質が改善されたという結果が出ています。
音楽療法にオススメの楽器
音楽療法を行う際に、オススメしたい楽器をご紹介します。
オススメの楽器①：トーンチャイム
トーンチャイムはハンドベル(複数人で演奏するそれぞれ別々の高さの音が鳴るベル)の一種で、アルミ合金でできたパイプを叩いて、共鳴させることで演奏します。
穏やかな音で癒し効果が期待できるとともに、一人では演奏できない為、グループで演奏してコミュニケーション能力を鍛えることが出来ます。
オススメの楽器②：チェロ
チェロは知っている方も多い楽器ですが、目の前で実物を見る機会が少ないため、障がい者の方に興味を持ってもらいやすいです。
また、チェロの音は人の声の高さに近いため、安心感が得られます。
演奏方法も、弓を使って引くだけでなく、指で弦をはじく奏法(ピチカート)もあり、指ではじくことで運動神経を刺激する効果があることも注目したい楽器です。
オススメの楽器③：マルチトーンタング
マルチトーンタングは、木の板が８枚組み合わさった筒状の楽器です。
マレット(ばち)で内側をぐるぐると回しながら演奏します。
演奏が簡単で面白い音が鳴るため、特に幼い子供に興味を持ってもらうことが出来る楽器です。
音楽は重要なコミュニケーションツール
音楽療法は、単純なリラックス効果や、楽しむといった役割だけでなく、音楽を通すことで人との関わりを促進してくれます。
コミュニケーションに苦手意識を持ちがちな自閉症の方にとって、音楽は重要なコミュニケーションツールの一つになり得るのです。
この記事の中で自閉症の方やそのご家族にとって、穏やかに過ごせるヒントが見つかったのなら幸いです。
自閉症の方が、少しでも周囲の人と楽にコミュニケーションが取れるようになると良いですね。
