音楽が、人の情緒面に大きな影響をおよぼすことはよく知られています。
また、身体機能にもさまざまな効果をもたらすことは古くから体験的に知られています。
しかし、音楽の生理的な側面についての体系的な研究が行なわれるようになったのは、20世紀に入ってからです。
今回は、音楽と脈拍の関係について解説します!
音楽によって脈拍はどう変化する?|音楽の生理的側面を理解しよう!

音楽のテンポと心拍リズムの関係性の仮設
脈拍と音楽との関係は、Dogiel や Diserenseの報告にもみられるように、比較的古くから注目され、検討がなされてきました。
一般的な音楽のテンポの平均は、健常者の心拍の平均(72-80)とよく一致し、また、これは人がものの認識を完全に行なうのに必要とする時間(0.75秒)ともよく符合するものであるといいます。
これらのことから身体のもっているリズムや脳の機能上規定される時定数と音楽のもつリズムとなんらかの関係があると推測され、音楽と心拍との関係は古くより注目されてきました。
つまり、音楽のテンポは、生体の心拍のリズムに影響をおよぼすことが仮説として考えられてきました。
音楽と心拍の関係の研究
これまで多くの研究者によって、音楽と心拍との関係が研究されているが、その報告結果はさまざまで、一致した結果をそれらから導き出すことは今のところできていません。
これらの研究の結果をまとめてみると、以下の3つにおおよそ分けられます。
- どのような音楽も、脈拍を増加させるとするもの、
- ほとんど変化がみられないとするもの、
- 活発で興奮を誘うような刺激的な音楽では脈拍が増加し、静かで鎮的な音楽では脈拍数は減少するとするもの
刺激的な音楽・鎮静的音楽と脈拍の増減
活発で興奮を誘うような刺激的な音楽で、脈拍が増加することは、Darter (1966)、Hincke(1970)、Dejong et. al. (1973) らが報告しています。
そして、Hyde(1918)、Coleman(1920)、Hincke(1970)、Lowell et.al. (1942)は、静かで鎮静的な音楽では、脈拍数が減少するとしています。
音楽のジャンルに問わず、脈拍を増加させる
一方、どの様な音楽でも脈拍は増加することを、Weld (1912)、Washco(1933、Lundlinより)、Ellis and Brighouse(1952)、Shaton(1957)らは述べています。
ただし、これらの報告でも、刺激的な音楽の方が鎮静的な有意な差は見いだされていません。
音楽よりも脈拍を増加させる程度は大きいといえます。
音楽と心拍数は関係ない?
しかしながら、Misbach(1924)、Johnson and Trawick(1938)、Zimmy and Weidenfeller (1963)による報告では、いずれの報告でも、統計学的に差があるといえるほどの心拍数は変化しないとされています。
つまり、これまでのところ、音楽により脈拍は変化し、なかでも刺激的な音楽で脈拍の増加傾向が認められるものの、はっきりとこれらに差がみられるということはできません。
人間の不透明な部分の存在を理解する

いかがだったでしょうか。
音楽と脈拍の研究を通して、一筋縄ではいかない人間の生理現象の奥深さを感じたのではないでしょうか。
実際に音楽療法を活用する場合は、ぜひそういった人間の不透明な部分の存在を理解して、治療に臨んでください。
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最後までご覧いただきありがとうございます。