「音楽療法」とは音楽を「歌う、聴く、演奏する」ことを通して、不安を和らげ、心のケアをすることを目的とした治療法です。
音楽療法は海外では第二次世界大戦をきっかけに、日本では1960年代以降から始まったとされています。
音楽療法に関していうと、日本は海外に比べると、20年近い差が生じていることになっているのです。
今回の記事では以上の事柄を踏まえた上で、日本と海外の音楽療法の違いについて紹介したいと思います。
日本の音楽療法と海外の音楽療法の違いとは?

日本と海外との違い①音楽療法の位置づけ
音楽療法は音楽を使って人を癒す治療法。その認識は日本でも海外でもかわりません。
しかし、その受け止め方となると違いが生じてきます。
日本は音楽療法の一部分だけを見て、そこの部分をより深く掘り下げ、活かそうとします。
対して、海外は、音楽療法の全体像を見た上で、それを広く浅く、様々な場面で役立だせようとする意向が読み取れます。
日本ではどうなのか①音楽療法の位置づけ
日本での音楽療法の位置づけは、あくまで「治療法」の1つにすぎないということです。
治療法という枠組みの中で、教育や医療、福祉といった様々な場面で活かそうとしています。
その過程は、1つの食材を削り取り、それら1つ1つを違う料理にこしらえていくやり方に似ています。
一見、深く掘り下げているように見えますが、基本は同じ食材なので、汎用性の面が非常に弱いことがデメリットです。
更に掘り下げている範囲そのものが狭いため、素人がおいそれと手を出すのが難しく、気軽に学ぶのは難しいという印象を抱かせてしまいます。
海外ではどうなのか①音楽療法の位置づけ
海外では2年おきに「世界音楽療法大会」が開かれています。この大会では世界中の音楽療法士が集まり、情報交換や研究発表を行います。
認知度の違いが日本に比べて、海外の方が進んでいることが分かります。それに加えて、音楽療法を単なる治療法の一環だけだと考えず、「学び、育んでいく」ような、誰でも一緒に手に取り、考えていける代物だという意味が込められているのです。
1つだけではなく、沢山の食材を用意することによって、料理の幅を広げていけるのと同じです。
自分にとって苦手な料理にあたっても、まだまだ自分に合った料理がある。その選択の余地が人々に学び知っていく上でのハードルを下げる良いきっかけになります。
日本と海外との違い②音楽療法士の資格の取り方
音楽療法を本格的に実施しようと思ったら「音楽療法士」という資格が必要となります。これは日本でも、海外でも変わりません。
ただ、一言に音楽療法士と言っても、その資格の習得方法は随分と異なります。
日本ではどうなのか②音楽療法士の資格の取り方
現在、日本における音楽療法士は「民間資格」として認識されています。この理由として挙げられるのは、日本では様々な自治体や団体が独自の規定に基づいた音楽療法士の資格を設けているからです。
幅広く、比較的に門が広いため、チャンスが多いことがメリットです。
しかし、明確な方針が確定していないため、目的がぶれやすいのがデメリットになります。
海外ではどうなのか②音楽療法士の資格の取り方
海外、特にアメリカでは、音楽療法士は「民間資格」として認識されています。しかし、様々な自治体や団体が独自の内容を設けている日本とは異なり、アメリカでは「MT-BC」という資格が存在しています。
MT-BCは、「米国音楽療法学会」の承認を受けた大学で、カリキュラムを学ばないと習得することができません。
つまりアメリカでは、門が狭い分、明確な道筋がはっきりと提示されていることになります。それは日本と比べると、習得する価値が上がっていると捉えることができるのです。
日本と海外との違い③音楽療法士の活躍の幅
日本と海外とで比べた場合、音楽療法士の活躍の幅には明確な差が出ています。
その理由は音楽療法士の社会における認識の違いにあるのです。
日本ではどうなのか③音楽療法士の活躍の幅
日本でも音楽療法士での活躍の場は正直なところ狭いです。理由は以下の通りになります。
- 生計を立てられる職業として確立していないから。
- 「看護師」や「作業療法士」等、医療や福祉に関わる人達が補助的なスキルとして獲得しようとするケースが多いから。
このことからも、日本では音楽療法士がメインで活躍できる場はまだ整っていないことが分かります。
音楽療法に対する認識不足が浮き出ているのです。
海外ではどうなのか③音楽療法士の活躍の幅
日本に比べると海外での音楽療法士の活躍の幅は広いです。理由は以下の通りになります。
- 世界音楽療法大会が開かれるほど、認知されている。また情報交換や研究の場でもあるので、進化のスピードが違う。
- ドイツでは民間資格ではなく「国家資格」として認知されている。このことからやれることの範囲が広いことが伺える。
人々や国が音楽療法のことをちゃんと認知しており、どんな効果をもたらすのかが分かっているので以上のような結果が出たのです。
日本と海外の音楽療法の違いを理解して学習を進めよう

3つの観点から日本と海外の音楽療法の違いを見ていきました。相違点は以下の通りです。
- 日本⇒海外と比べると音楽療法の資格は取りやすい。しかし、応用性にかける。
- 海外⇒日本と比べると狭き門。しかし、取った後の活躍の場は幅広い。
日本は海外に比べると、音楽療法に対して、若干の遅れがあることが分かったと思います。
音楽療法は今後欠かすことができない存在になるでしょう。だからこそ、日本と海外との音楽療法への違いを1人1人が理解した上で、学習に取り組む必要があるのです。