音楽療法を研究する人達は、音楽の作用の基礎が、音楽の体に対する作用によることを証明しようとしてきました。
人が音楽に感動するのも、音楽で慰められるのも、うっとうしい気持ちがすっきりするのも、力が張ってくるのも、すべて音楽が体に何らかの作用をして生理的にプラスの変化を体に引き起こすためだと考えました。
その研究を踏まえ、2つの記事にかけて、音楽の生理的作用を説明し、音楽療法の効能の理解を深めていきます。
後編の今回は、音楽の生理的作用における捉え方について、ご説明します。
ぜひ最後までご覧ください。
【初心者向け】音楽の生理的作用における捉え方は?|音楽療法の生理的作用を理解しよう!(後編)

タウト(Michael H. Thaut) らの実験によりますと、聴く音楽の種類に拘わらず、本人が聴きたいと思う音楽の場合には、どんな音楽でも、共通に身体の緊張が解け、体表面の毛細血管が拡張して皮膚温が上昇し、かつ筋の緊張度が低下します。
音楽は人にリラックスを与える最適な刺激なのです。
さてこれらの問題と関連して、音楽の生理的作用については、2つの論点があることを明らかにする必要があります。
音楽の生理的作用の論点①:音楽一身体という直接的なルートでの作用する
第1の論点は、音楽の生理作用を論ずる以上、音楽一感情一身体という感情を経由したルートで論ずるのではなく、音楽一身体という直接的なルートで作用が行われる必要があるという点です。
音楽は感情を介さなくても直接身体に影響を与えることが出来る。
言い換えれば、人間の心理に訴える音楽の美的、感情的ないしは娯楽的性質よりむしろ、音の構成とか、音の動きとか、音の緩急強弱など、音楽の物理的性質が身体の変化に関わっているのだという論点です。
後に触れる 1/fゆらぎ理論は、音楽の持つこの物理的性質が、なぜ人間に快適感を引き起こすかの1つの説明原理を暗示しています。
それ故、1/f理論は、音楽一身体の直接的関係の1つの論拠になるかも知れません。
音楽の生理的作用の論点②:「心」については、科学的基礎にはなり得ない
第2の論点は、音楽療法の科学的基礎だと長いこと誰もが考え、またそれを疑わなかった音楽の生理的基礎が、音楽療法の主要対象である「心」については、身体の場合とは違って、その科学的基礎にはなり得ないのではないかという議論です。
つまり、「心」には「心」の論理があって、それは身体の論理とは違うということです。
160億の脳神経細胞の総合として、「心」は自分で考え、その自分の考えを意志として体の隅々まで伝達しています。
心の病気の場合ですら、「心」は心の論理に従って動いているのではないかと考えられます。
例えば、ストレスに曝された心は色々な反応を引き起こします。
何がその人にとってストレスになるかは、その人の心の歴史と関わり、その人の心の歴史を調べないと探り出せません。
もしその時、ストレスが解消されるような措置が取られたら、心は異常な反応をしなくても済むでしょうし、ストレスの反応が出ている場合には、その反応を幾分なりとも軽減することに役立つでしょう。
ところで、心はそれぞれ自分の歴史を持っているということは、心が一つの物語であることを示しています。
心の物語は心の歴史の中に深く秘められ、科学では決して到達できません。
ストレスに曝された心は、その各自の物語を秘めながら、ストレスを和らげる環境に応じて、その環境の中で、苦痛を癒され、ストレスへの耐性を回復して、再び健康性を取り戻していきます。
音楽療法の新しい理論の根底に、この音楽が持つストレス解消能力、つまり生理的にみれば音楽のリラクセーション機能があることは、改めて強調してよいと思います。
音楽による心への影響も理解しよう

いかがだったでしょうか。
音楽を聞いて直接体に作用をすることもあるが、心が間に挟まっていることも意識すると音楽療法の奥深さを感じることができますね。
どちらにせよ、音楽には、生理的にみれば音楽のリラクセーション機能があるということは断言できますね。
最後までご覧いただきありがとうございます。