「音楽療法」とは、音楽の持つ力を利用して、心のケアや心身の発達、脳の活性化等の促進を目指す治療法です。
音楽は人々の生活に安らぎをもたらす大事なモノとなりました。そして、今や「医療や福祉、教育」の場でも導入されるようになったのです。
しかし、音楽療法を実施していくにあたってはいくつか注意しなければならない点があります。
今回の記事では音楽療法の実施における注意点を記します。
音楽療法を取り入れる前に知っておきたい注意点

音楽療法に対する理解を深める
音楽療法を導入するにあたっては、ちゃんと理解を深めた上で、導入する必要があります。
ただ闇雲に音楽を流したり、演奏したりするだけでは、真の音楽療法とは言えません。
「音楽、医学、心理学」の3つの観点から音楽療法に関する理解を深めた上で、実践していって欲しいのです。
音楽に対する知識と理解を深める
音楽には癒しの効果があります。
なぜ音楽には癒しの効果があるのでしょうか。その答えは「ゆらぎ」にあります。
ゆらぎとは、音楽が持つ一定の規則的なリズムの中に、いくつか不規則なリズムがある状態のことを指します。このゆらぎとは、川のせせらぎや風の音と言った大自然の音と同じ波動を持つものとされています。この波動は、適度な安心と少しの緊張感を感じさせるもので人々に癒しを与えるものなのです。
更に、人間の生体リズムの中にも、ゆらぎを含んでいると言われています。
音楽が持つゆらぎと人間のゆらぎ、この2つが共鳴しあうことで癒しの効果を実感するのです。
医学に対する知識と理解を深める
音楽療法における医学的観点は「脳」と「エンドルフィン」と「自律神経」です。
例として音楽を聴く行為を見てみましょう。
音楽を聴く行為が脳に与える影響
- 音を聴く⇒感覚を認知する「知覚機能」が刺激される。
- 音楽の内容を理解する⇒過去の記憶を掘り起こし、再確認する「認知機能」が働く
- 音楽を思わず口ずさむ⇒自分が知っている単語を使う「言語機能」が活性化する。
- 手拍子やリズムに乗り出す⇒体を使うための「運動機能」が働く。
- 知らない曲に出くわす⇒新しい物事を記憶する「記憶機能」が働く。
このように、音楽を聴くだけでも、沢山の機能が働き、刺激しているのが分かります。
これらの行程を踏むことによって「癒し=人にとって好ましい感情」が生まれます。
好ましい感情は、情緒を生みだす「扁桃体」にも影響を与え、表情や感情の豊かさに繋がっていくのです。
エンドルフィンと脳との関係
エンドルフィンとは人間の脳における「自然の鎮痛剤」とも呼ばれている脳内物質のことです。
音楽を聴いている時、人はこのエンドルフィンの分泌を増大させる力が働きます。エンドルフィンは幸福や満足感を抱かせる物質なので、癒し効果へと結びつきます。
自律神経と脳との関係
更に音楽は「自律神経」のバランスを整える働きもします。自律神経のバランスが崩れてしまうと、体の不調を招きます。
音楽療法を行うことによって心と体を活動状態にする「交感神経」と心と体を休息・安息状態にする「副交感神経」の両方を高め、自律神経の調子を合わせることができます。
脳とエンドルフィン、自律神経、3つの分野の理解を深めることで、より効果的な癒しを実現させることに繋がるのです。
心理学の「同調効果」に対する理解を深める
音楽療法と同調効果には深い繋がりがあります。
同調効果とは、人間が、自分の考えや意見、気持ち等を周囲に合わせたりするときの行動を指す言葉です。人間は自分と似たような考えや意見を持つ人と一緒にいたがる性質があります。
そして、そのことは音楽にも通ずると言われています。
悲しいときや落ち込んでいるときは「明るい曲」を聴いたり、歌ったりするのではなく、あえてその気分に則した「暗い曲」を選ぶと、かえって落ち着くという効果があります。
導入前に音楽療法のメカニズムを理解しよう

「音楽療法を取り入れる前に知っておきたい注意点」を3つの観点から説明しました。
ただ、流行っているからという理由で、実施したのでは、良い効果など生まれません。
じっくりと音楽療法のメカニズムを自分の中に落とし込んだ上で、導入するか否かを決めて欲しいのです。