音楽療法のHow To

胎児のAuditory Responsesの研究

人間の発達にとって音楽の影響は大きいです。 特に、幼児から始まる幼稚園・保育園ならびに学校における音楽教育では、子ども達の健全な情緒や精神の発達にとって、音楽は有用な教育の手段として成果を上げています。

また、それについて多くの研究が報告されています。

その一方では、小児医療の人間化 humanizationを求めて、心身障害の治療ばかりでなく、難病の子ども達の病棟生活のアメニティを高めるためにも音楽が利用されています。

しかしながら、小児の音楽療法となるとまだその定義づけは充分ではありません。

胎児・乳児と音楽の関係となると、研究は勿論のこと観察も充分ではありません。
当然のことであるが、子守歌が乳児と母親との心の絆の形成に良いとか、さらには児の精神発達に良い影響を与える可能性は考られています。 しかし、歌そのものの文学的研究はみられても、心理学的な研究あるいは小児科学的な研究は殆んどありません。

あるのは、音、音声あるいは音楽などに対する、胎児・新生児の反応Auditory Responsesの研究のみのようです。
こういった研究の成果は、胎児・新生児の特性を考えてみれば、音楽療法、さらにはその基盤となる音楽の医学・生物学的な意義を検討する有用な手段となり得るのです。

胎児のAuditory Responses

いつ、胎児は聴覚を獲得するのか?

最近の神経生物学的研究によれば、耳や聴覚器の形成は妊娠4期から始まり、脳のニューロンのネットワークの基本は妊娠8カ月までにはほぼ完成していると考えられています。

勿論、脳のニューロンのネットワークは、シナップス形成により出生後特に複雑になり、ニューロンを助けるグリヤ細胞も増殖し、脳の重量は急速増加してくるのは周知の通りです。 全般的にみて聴覚は28週から31週の初めの間に機能しはじめています。

胎児の心拍動や体動にみられる Audi-tory Responsesの研究

ボディソニックカプセルを妊娠中の母親に用いて、音楽と振動が胎児にどんな Auditory Responses をおこすかについてもさらに研究が行なわれています。

厚生省ならびに放送文化基金で、この分野の研究をした夏山博士によると、工学的に定性定量化した音波リズムのクリック音を腹壁から胎児にむけて発射し反応をみた研究によると、胎児の心拍動や体動にみられる Audi-tory Responsesは次の通りです。

妊娠23週目までのAuditory Responses

妊娠7カ月までは反応に乏しく、明らかな結果はみとめられません

しかし、妊娠8カ月から9カ月の始めになると、心拍動が一過性に上昇する胎児がみられるようになり、10カ月に入ると、ほぼ全ての胎児でこの反応がみられるようになりました。

音楽が振動として胎児に伝わるが、妊娠9~16週の胎児では反応がみられなかったです。
但し母親に情緒的な変化がおこる時に限っては反応が出たのです。

これは、胎児の脳が音楽に反応出来る程発達していないことを示すものです。 しかしながら、妊娠17~23週に入ると、ボディソニックカプセルで音楽を聞かせている時間中、心拍の変化記録が出来ない程激しい体動を起しつづけていました。 このAuditory Responsesは85%の胎児にみられています。 しかし、この反応は母親が嫌いな音楽だと発現しないことが多かったのです。 激しい体動は、音楽を好む反応と考えられるかどうかは、今後の検討に残されています。

妊娠24週目以降のAuditory Responses

妊娠24~27週では、音楽が流れている間は余り変化がなく静かで、音楽が終ると心拍の変動が激しくなる胎児がみられました。 妊娠28~30週になると、変化がなく静かになる現象をはっきり示すようになり、また激しい体動を示す胎児がふえて来ます。 妊娠32〜35週の胎児になると、静かになるのと激しくなるのとの比は50:50でした。 妊娠36週後になると、Auditory Responsesが複雑になり、心拍が一過性に上昇する現象がしばしばみられるようになりました。

この妊娠週数による胎児の音楽に対する反応の変化は、脳の成熟度と関係することは明らかであるが、激しくなる反応と静かになる反応の相違をどの様に解釈すべきかは明らかではありません。 初期にみられる反応は、音楽を単なる聴覚刺激としてうけとめていると考えられます。 また、後期にみられる静かになる反応は音楽を楽しんで耳をすまして聞いていると考えるべきか、いろいろな考えが出ます。

ヘッドホンからの音楽の胎児への変化

ヘッドホンで母親だけが音楽を聞いて胎児の反応をみたところ、妊娠9~23週では明らかな反応がみられず、妊娠24週以降の胎児では、ボディソニックカプセルによる反応と似ていました。

すなわち、妊娠24~31週では胎児心拍の変動は押刷され、32週以降では活性化され、36週以降では心拍数のベースラインが上昇したり、音楽が終って心拍数変動が非常に少なくなるという複雑な反応を示す胎児がみられました。

これは、母親の音楽によるムードが胎児に影響することも考えられるし、ヘッドホンの音楽が母親の体を伝わって胎児にAuditory Responsesをおこしているかも知れません。

前者とすれば、母親のムードによって分泌するホルモン神経ペプタイドが、胎盤を通過して胎児に作用している可能性も考えられます。

https://ongaku-no-chikara.com/stimulus_therapy_adoption/

妊娠の段階で胎児の反応は異なる

いかがだったでしょうか。

妊娠の段階によって胎児の反応が異なりますが、母親の音楽の好みが胎児の反応に影響を与えるのは、何か不思議な感じがしますね!

最後までご覧いただきましてありがとうございます。

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