音楽療法のHow To

成人向けの活動的音楽療法について徹底解説!

音楽の活用法により音楽療法は細分化されています。

しかし、活動的音楽療法は、歌唱、器楽演奏、創作を意味します。

今回はそんな活動的音楽療法の成人領域について、解説します。

成人向けの活動的音楽療法について徹底解説!

成人向けの活動的音楽療法の対象は?

この領域で歴史的に最も適用されている対象は、精神分裂病(急性期を除く)、躁うつ病などの精神病であり、多くは精神病院で行われます。

神経症、心身症の症例に対しての受容的音楽療法の報告も最近は多くみられるが、動的音楽療法は、個人においても、集団においても我国では発達していません。

成人向けの活動的音楽療法の治療の実際は?

我国では、ほとんどが精神病院で行われ、内容も集団合唱、集団合奏が主であり、個人音楽療法はまれです。

合唱に際しては、交流の糸口をつかみ、日常生活の適応への導入を重視するので、患者の得意な歌、精神面をゆさぶる曲を用いることが多いです。

成人向けの活動的音楽療法の楽器演奏について

楽器演奏に関しては丹野氏、山口氏、松井氏の報告があるので、順次説明します。

成人向けの活動的音楽療法の楽器演奏①:丹野氏の報告

丹野氏は、分裂病者に対する合奏のシステム化を試み、導入部と展開部に分けました。

導入部においては、

  1. 学習的展開
  2. 音楽構成の展開

展開部においては、

  1. 運動的性格を利用した展開
  2. 合奏の社会性を利用した展開

となっています。

それぞれの段階での効果として導入部では、

  1. 達成感、着実性、機敏性
  2. 活動意欲、持続性、言語表現へのステップ

展開部では、

  1. 現実性、機敏性、行動の適応性、協調性
  2. 協調性、社会的規範、主体性、責任感、自信、緊張のコントロール

などを拳げています。

それぞれの段階の目標が達成されやすいように、編曲などの技術的工夫も必要とのことです。

成人向けの活動的音楽療法の楽器演奏②:山口氏の報告

山口氏らは、患者の合奏グループを作り、最終的には演奏旅行という形態にまで発展させ、社会的適応レベルの上昇、新しい人間関係の形成が認められたことを報告しています。

成人向けの活動的音楽療法の楽器演奏③:松井氏の報告

適応水準や好みの違う患者の合奏を効果的に行うことは非常に困難であるが、松井氏によれば、適応水準と音楽技術に基いて、5つの等質グループをつくり、最も水準の高いグループでは合奏、一番低いグループでは、なべ、茶碗、ボール箱をたたくリズム遊びを教え、それぞれ効果を得た報告をしています。

以上をふまえた合奏の要点は以下の8項目あります。

  1. 既成の楽譜を、演奏しやすく編曲するか、各楽器の難易度に合わせて、しかも美しさをそこなわぬように作曲する等の技術が要求されます。
  2. 動機づけとして、生の演奏を鑑賞する機会を持ったり、自分達が発表する機会を作ることが必要になります。
  3. 作曲をも含めた音楽技術を持った専従の職員と、演奏技術を持った数人の職員の協力が望ましいです。
  4. 集団はなるべく等質集団の方がやりやすく、 異質集団では、成員個々に合わせた役割を工夫する必要があります。
  5. 技術水準の低い集団では、合奏という既成のイメージを捨ててかかる必要があります。
  6. 選曲は、その集団の技術水準より、やや高めの曲で、成員に好まれる曲を選び、それが達成される過程に、治療的意義が認められます。
  7. 合奏の治療的意義は、楽しみながら、しらずしらずの内に、患者の自我の様々な機能が訓練されることにあります。
  8. 音楽療法家の仕事は、各成員の技術水準や適応水準を充分わきまえた上で、治療目標が達成できるように援助することであり、ある時は満足感を高め、ある時は誤りを修正し、ある時は個別に技術指導をし、ある時は集団内緊張を高め、ある時は緊張を緩和するように働きかけることです。

合唱、合奏、いずれの場合も時間は60分位のことが多く、定期的に院内活動の一つとして行われていることが多いです。

成人向けの活動的音楽療法の創作

次に創作についても少しふれておきます。

松井氏によれば一般的に創作活動は難しいと思われているが、それは誤りで、実はかなりの患者に適用できます

たとえば簡単な詩にメロディーをつけ皆で歌うなどです。

創作することにより精神病理があらわになることもあるが、逆に創作により総合的な自我が発揮されることも多いです。

この時には治療者の援助による動機づけも重要であり、そのために治療者自身も、小さな発見、わずかな出来事にも感動できる感性が必要であります。

と同時に患者とともに一つのものを創作していくことを喜べる感性も必要です。

https://ongaku-no-chikara.com/commentary_active_music_therapy_adolescents/

エビデンスを理解して、効果的に治療しよう!

いかがだったでしょうか。

成人向けの活動的音楽療法には、事例があるのでぜひ、しっかりと効能を理解して実践してみましょう!

他の記事でも音楽療法に役立つ知識を配信していますので、ぜひご覧くださいませ。

最後までご覧下さりありがとうございました。

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