音楽が、人の情緒面に大きな影響をおよぼすことはよく知られています。
また、身体機能にもさまざまな効果をもたらすことは古くから体験的に知られています。
しかし、音楽の生理的な側面についての体系的な研究が行なわれるようになったのは、20世紀に入ってからです。
今回は、音楽と脳波(EEG)への影響について解説します!
音楽による脳波の影響とは?

脳波とは?
脳波(electro-encephalography)は、脳神経細胞の活動電位を記録したものであるが、意識状態の水準をよく反映するとされています。
深い睡眠やもうろう状態では、脳波は緩やかな波となって徐波化し、注目や知的作業により通常のa 波(8~13サイクル)は、消失して(a 抑制)、速い波(B波)が多くなります。
Fraisseの音楽と脳波の抑制との関係の調査
Fraisse(1953)は、音楽と脳波の波の抑制との関係を調査しました。
とくにa波の抑制の多かったのは、曲のなかでテーマの呈示部と再現部であったといいます。
このことは、概して音楽への理解が深いものほど変化の量が多く、音楽的素養が高いものに著明でありました。
聴く態度と脳波の変化
また、音楽を聴く態度も脳波の変化に影響を与えます。
あらかじめテーマを取り出して記憶させ、そのテーマが曲中でどの様に展開するかに注意させ、テーマを再確認することを要求される分析的な態度で曲を聴いたときには、自発的、自然な態度で聴いたときよりもa波の抑制がより多くおこります。
このことは、曲の中で繰り返されるテーマは、聴取者の注意を引きつける役割を果たしており、音楽的知識の多いものほど音楽を分析的に聴いていることがわかります。
桜林/永村による音楽と脳波の分析
桜林と永村(1964)は、ブルックナーの「交響曲第4番」の全曲を被験者に聴かせ、音楽と脳波との関係を細かく分析しています。
それによると、a波の抑制される部分は、音楽開始の部分、テーマの出現、曲中の休止、管楽器の音、音程の飛躍する部分、リズムの不安定、高音域、クレッシェンドなどです。
一方、a 波が増強される部分は、反復(テーマの反復を含む)、非旋律的リズム刻み(ピチカート、トリル、リズム安定を含む)、低音域、フォルテの連続、小休止の後の再開始などであることを明らかにしています。
音楽と生体の反応の関係はまだ研究途上

脳波に限らず、音楽に対する生体の反応を左右する要素は多く、これまで行なわれた研究によって、音楽が身体的な生理的プロセスに多大な影響を与えていることを明らかにしてきてはいるが、その反応の性質や、反応量については種々の報告がみられ、一定の方向性や結論がえられるところまでいたっていないのが現状です。
しかしこれらは、音楽に種々の要素が含まれており、その情報量の多さ、奥行きの深さを示すものとしてとらえることもできます。
今後、新たな解析の方法をもちいることによって、これまでの問題点も解消されるものと期待されます。
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