音楽療法のHow To

音楽で感動させて治療する鑑賞療法とは?│受容的音楽療法

音楽は人類の長い歴史の中で、ある時は感情表現の手段として、またある時は高ぶった感情を鎮静する手段として常に人類と深いかかわり合いをもって発展してきました。

音楽は人間の美的感覚を満足させ、同時に知的過程を通らずに直接情動に働きかけ、情動を調整したり、その結果として社会適応を阻外するような衝動の昇華作用を発揮します。

音楽の以上のような作用を利用し、心身の障害の回復、特に疾患の発症や経過に動の乱れが関与するような病態の治療に音楽を用いる音楽療法は、近年心身医学領域でも種々の病態に対して用いられ、その成果の報告が散見されるようになりました。

今回は、音楽を聞いたときの感動によって体の変化を誘発する受容的音楽の鑑賞療法について、概要をご紹介します。

音楽で感動させて治療する鑑賞療法とは?│受容的音楽療法

音楽の感動を音楽療法に利用しようとするもので、音楽の鑑賞を治療契機として用います。

ドイツを中心に、主として神経症の治療に用いられるが、最近では日本でも心身症・神経症の治療手段として薬物など他の治療法と併用して用いられはじめました。

理論的基盤として精神分析的(力動的)精神療法の中に組み込まれるものと、弛緩訓練として位置づけられる二種類の方法があります。

鑑賞療法の種類①:精神分析的(力動的)な治療

精神分析的(力動的)な治療では、通常の精神分析の対象になりにくい、自分の感情の言語能力の貧困な患者に対して用いられます。

これらの人々に対して、音楽による感情誘発効果により、

  1. 治療者一患者関係の促進
  2. 治療の行きづまりの打開
  3. 葛藤の言語化の促進
  4. 除反応の誘発

などの効果が得られ易いです。

一般に心身症患者の性格特徴として自分の感情の言語化能力が貧困で面接者との交流が成立しにくい失感情症(Alex-ithymia) と呼ばれる傾向のあることが多くの研究家により指摘されています。

心身症診療の中で、このようなタイプに対する治療的接近の手段として鑑賞療法の役割が今後大きくなる可能性もあります。

鑑賞療法の種類②:弛緩訓練的な音楽療法

一方、弛緩訓練的な音楽療法では、患者の心理的な葛藤に触れることなしに、心身症・神経症の患者が示す疾病へのとらわれと、そこに生じる心身の誤った緊張を問題とし、音楽を通してリラクセーションを達成することにより、客観的な視野を獲得することに主眼がおかれます。

心身のリラクセーションにより得られる全身の筋弛緩は、不安・恐怖・緊張に対して、拮抗作用を有することがWolpe, J. ら行動療法の研究者により科学的に立証されています。

従来、日本の心身医学では、弛緩訓練の手段として自律訓練法(以下AT法)が一般的に用いられていました。

鑑賞療法はAT法に比し、実施にあたって道具が必要なため施行場所を選ばねばならない不利な点はあるが、AT法を行う上で壁となる受動的注意集中という感覚を身につける必要がないという利点をもっています。

いずれにしても鑑賞療法を弛緩訓練的に用いることは、方法が簡便であり、治療目標も到達可能な範囲に設定しやすいため日常臨床において実施しやすい利点があります。

https://ongaku-no-chikara.com/what_adoption_music_therapy/

患者の症状に合わせて適切な治療法を選択しよう

いかがだったでしょうか。

音楽の持つ、人を感動させる特徴を使った治療法を紹介しましたが、患者に合わせてどういった治療法が効果があるのかを見極めることが大事になります。

他の記事でも、違った治療法を紹介していますので、ぜひご覧くださいませ。

最後までご覧いただきありがとうございました。

https://ongaku-no-chikara.com/stimulus_therapy_adoption/