音楽は人類の長い歴史の中で、ある時は感情表現の手段として、またある時は高ぶった感情を鎮静する手段として常に人類と深いかかわり合いをもって発展してきました。
音楽は人間の美的感覚を満足させ、同時に知的過程を通らずに直接情動に働きかけ、情動を調整したり、その結果として社会適応を阻外するような衝動の昇華作用を発揮します。
音楽の以上のような作用を利用し、心身の障害の回復、特に疾患の発症や経過に動の乱れが関与するような病態の治療に音楽を用いる音楽療法は、近年心身医学領域でも種々の病態に対して用いられ、その成果の報告が散見されるようになりました。
今回は、高血圧患者に対する、近年の受容的音楽療法の実例を紹介します。
高血圧患者への受容的音楽療法の現状を紹介!

近年の受容的音楽療法の動向
ある疾患に対して特定の曲が有効であるという考え方に代わり、音楽の選択に当っては患者の個別性や治療構造を重視する考え方が主流となっています。
構造としては、ボディソニック方式の椅子を用いることが多く、聴覚のみならず振動覚も刺激する方法をとっています。
この方法を用いた報告が1987年より定期的に日本バイオミュージック研究会誌で報告されています。
高血圧患者へのアプローチ報告
永田氏らによって、被験者に好みの音量・音質・曲目で安楽椅子を用い音楽鑑賞療法を行い、その前後における血圧を測定されました。
この結果、音楽鑑賞後に収縮期血圧140mmHg以上の群では収縮期圧・拡張期圧共に低下が認められたと報告しています。
今後は、軽症高血圧の臨床でも弛緩訓練としての音楽療法の併用により、降紅薬の減量等の効果をめざした研究の発展が課題となり得ると考えらます。
今後の研究展望
本邦での受容的音楽療法の臨床経験は近年増加の傾向にはあるものの、全体としてはその数も少く、マスコミ先行の傾向すら認められます。
音楽の選択には個別性や治療構造を重視する観点が重要であり、この点で受容的音楽療法を行う上でも専門性が要求されると筆者は考えます。
逆に個別性や治療構造に十分配慮すれば、受容的音楽療法の対象とする病態は今後拡大する可能性があると考えられます。
研究段階のため、患者に合わせた治療が必要

いかがだったでしょうか。
高血圧患者への受容的音楽療法アプローチは、研究段階ではあるものの、効果が認めらているという報告もあります。
現在確立されている医療的アプローチに加えて、試みることをお勧めします。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。