「音楽療法」という言葉を知っていますか。
音楽療法とは、音楽を使って人間の脳に働きかけ、心身をリラックスさせることを目的とした「健康法」のことです。
音楽療法は自分だけではなく、相手の心も癒すことができます。
そして、そんな音楽療法を仕事にして、活躍している人もおります。
今回の記事では、音楽療法に興味を持っている人に対して、取っておいた方が良いおすすめの資格を紹介していきます。
日本で取得できる音楽療法の資格2選!

音楽療法におすすめの資格①音楽療法士
音楽療法士は、音楽療法を専門的に扱う上で、欠かすことのできない資格です。
但し「療法士」と付いてはいますが「作業療法士」や「理学療法士」のような「国家資格」ではなく、あくまで「日本音楽療法学会」が主催する「民間資格」という位置づけになります。
そのため、受ける恩恵も海外に比べると少ないのは否めません。
しかし、それをカバーする程の社会的意義のある仕事を担っているのも事実です。
音楽療法士の仕事内容
音楽療法士の仕事は心身を回復させ、人間が持つ機能の改善をするためのサポートを行うことです。
対象者は幅広く、子どもから高齢者など幅広くなっています。
また、健常者だけではなく障がい者の発達、学習支援とリハビリテーションも行っています。
医療や福祉、教育など様々な現場で仕事をしているのです。
音楽療法士の資格取得方法
音楽療法士になるための方法は2つあります。
1つ目は、日本音楽療法学会や全国音楽療法士養成協議会等の各団体の認定を受けた学校で、指定のカリキュラムを修了した後に試験を受けるやり方です。
2つ目は医療や教育、福祉や心理の現場で対象者と直接関わる経験を積んだ後に試験を合格し、必修講習会を受ける方法となります。
音楽療法士の取得難易度
2つの方法に共通して言えることは、どちらのやり方も時間とお金がかかることです。
学校でのカリキュラム受講も3~4年の時間と年間の学費だけでも100万円以上かかると言われています。更に、認定校は全国で17校しかなく、非常に狭い門となっているのが現実です。
現場で経験を積むやり方も3年以上が大原則で、講習会で全カリキュラムを習得するまでに2年半近くかかると言われています。
ここまでのことから、音楽療法士の資格を取るのには並大抵の覚悟ではできないことが分かるでしょう。
音楽療法士の資格を取るメリット
音楽療法士の資格を取るメリットは以下の2つです。
- 教育や福祉、医療や日常生活での困りごとに対処できる知識が手に入る。
- 幅広い世代や、色々な背景を持つ人々と接することができる。
①の様々な知識とはどのようなものがあるのでしょうか。
それは、統合失調症やうつ病などの「精神障害」や認知症や脳梗塞などの「病気」に対する知識や対処法や「心理学」の知識についても知ることができます。
これらの知識を基に、教育や福祉、医療の現場や日常生活での困りごとにも対処できるようになるのです。
②の理由は、音楽療法士の現場が学校や高齢者施設、病院など多岐にわたっているからです。
そこには老若男女問わず様々な人がいます。そして、1人1人が歩んできた歴史とドラマが存在しています。
そんな人々と共同作業を行う音楽療法は実施する側とされる側、両方において良い刺激になるでしょう。
このように、音楽療法士の仕事は単なる「ケア」だけにとどまりません。
相手の人生に実りを与える、魅力的な仕事なのです。
音楽療法士の想定年収
日本では、まだまだ音楽療法士への認知度が低いため、給与も年収に換算すると約300万円、月収だと約20万円が相場だと言われています。
音楽療法におすすめの資格②音楽療法カウンセラー
音楽療法カウンセラーとは「日本インストラクター技術協会」が認定している民間資格です。
受験資格条件は特になく、音楽療法士と比べると比較的に取りやすい資格となっております。
音楽療法カウンセラーの仕事内容
音楽療法カウンセラーは、生活の中における音楽の役割や重要性を理解した上で、人々の相談や助言を行う人達のことを指します。
但し、身体的病気を持っている人や障がい者を対象とはしていません。
メインとしているのは健常者です。
彼らの心理面に携わることで、ストレスを軽減していくことを目的としています。
その具体的な方法は、まず相手の容態を把握することから始まります。
そして、どんな音楽を聴けば、より良い効果が望めるのかを研究・考察し、実際に導入していくのです。
音楽療法カウンセラーの資格取得方法
日本インストラクター技術協会等の民間団体が指定する試験に合格することが条件です。
受験料は1万円で、年に何回か開かれているので、資格取得の門は広くなっています。
音楽療法カウンセラーの取得難易度
音楽療法士の資格取得が最高で5年近くかかりますが、音楽療法カウンセラーは違います。
民間団体が主催している「通信講座」を利用したら最短で2ヵ月、最長6ヵ月程度で取れることができるのです。
だからこそ、比較的に取りやすいのです。
さらに全体の70%以上が正解だったら合格となるので、試験に受かりやすいのも特徴となっております。
音楽療法カウンセラーの資格を取るメリット
音楽療法カウンセラーの資格を取るメリットは以下の通りです。
- 楽器の知識や弾き方を知らなくても、音楽療法を実施できる。
- 人へのアプローチの仕方が増える。
①は音楽療法カウンセラー独自の強みです。
音楽療法に興味があっても、楽器が弾けないという方もいるでしょう。
しかし、音楽療法カウンセラーは演奏技術を必要としていません。その代わり、音楽の知識や歴史に基づいた上で、人を癒すことを目的としています。
音楽療法士と同じくらい音楽と深く関り、人々の心身に安らぎをもたらすことができるのです。
②は人の心と大きく関わっていく話となります。
教育や福祉、医療の現場で働くにあたっては、相手に心を開いてもらうことが大切です。
しかし、自分たちが持ちうる従来の知識だけではうまく事が運ばない状況もあるのが現実です。
そんな時に「音楽」という武器を得ることで、新しいアプローチの仕方が生まれるのです。
このことから、音楽療法を実施できる音楽療法カウンセラーは、現場で広く活躍できる資格と言えます。
音楽療法カウンセラーの想定年収
音楽療法カウンセラーの年収に関しては、はっきりした情報がありません。
その理由は、音楽療法カウンセラーの社会的地位が確立されていないからです。
番外編 海外の資格には一体どんなのがあるのか
海外の音楽療法士は「ホスピスケア=終末医療」の現場でも登用されていたり、公の場で研究成果を発表する「世界大会」が用意されているほど優遇されています。
そこで、ここではアメリカの資格「米国認定音楽療法士=MT-BC」を紹介します。
MT-BCの特徴は以下の通りです。
- MT-BCはあくまで民間資格である。
- カリキュラムの内容が非常に豊富である。
- 臨床経験が組み込まれている。
①を見た時、意外と思った人がいるかもしれません。
何故なら、音楽療法に熱を入れている割には、資格の地位が低いと考えたからでしょう。
しかし、国家資格ではないとはいえ、その熱量は高いです。
MT-BCは「米国音楽療法学会=AMTA」の承認を受けた大学でしか音楽療法士のカリキュラムを受けることができません。
日本で音楽療法士の資格を取得する以上に、かなり狭き門であることが分かるでしょう。
それだけ門を狭くしたのは、音楽療法士としての力をきちんと養い、活躍できるかを見定めるためにあります。生半可な気持ちで音楽療法士の資格を取るのではなく、真摯に取り組んで欲しいと言う考えを汲み取ることができます。
②のカリキュラムとはどんなものがあるのでしょうか。
その内容は「音楽理論、音楽史、ピアノ、ギター、声楽、パーカッション、アンサンブル、心理学、解剖学」など、合計9点を指します。
一点に特化するのではなく、どんな状況でも音楽療法士として対応できるようにしなければならないという目的をこのカリキュラム内容から読み取ることができるのです。
また「実技」の際には、上記に挙げた楽器以外を選択して、専攻していく機会もあります。
③の臨床経験とは病院や福祉、教育の現場で実際に音楽療法士として働くことを指します。
日本だと臨床経験は、日本音楽療法学会から認定されていない学校で学んだ人に限って、課せられるものでした。
しかし、アメリカは違います。
実に1200時間、約2か月近い期間が用意されており、その内900~1040時間は学外で学んでいるのです。
臨床経験をただの補助材料として見るのではなく、ちゃんとカリキュラムとして組み込まれている時点で、臨床経験の重要性を示していると言えるでしょう。
もっと音楽療法を本格的に学びたいのであれば、海外へ行き、音楽療法の勉強をしてみるのも1つの手段でしょう。
関係のある仕事をしながら資格取得を目指そう!

日本で取ることができる音楽療法の資格を解説しました。
ただ、日本は音楽療法士の認知度が低いためか、仮に資格を取ったとしても求人数が少ないのが現実です。
音楽療法をメインとして働くことは狭き門へとなっています。
しかし、何があっても音楽療法に関わる仕事がしてみたいと答える人はいると思います。
そこで、音楽療法に関わりたいと強く願っている人達は、まず、活躍できる機会が多い医療や福祉、教育等のお仕事をしながら音楽療法の資格を取得していくことをおすすめします。