音楽療法のHow To

音楽療法と発達障がい丨発達支援につながる音楽療法の始め方

「発達障がい者」とは生まれつきの脳の働き方の違いによって、学習面や行動面、情緒面で特徴が見られる人達のことです。

それ故に「自分はどこか人と違う」という意識が強く、そのせいで生き辛さを感じています。

しかし、昨今では、そんな発達障がい者の手助けとなる可能性を秘めた取り組みが注目されています。

それが「音楽療法」です。

音楽療法とは「歌う、演奏する、聴く」等の行為を通して、心の安定や精神的な成長を促し、発達支援へと繋げていく治療法です。

今回の記事では、音楽療法を発達支援の場において実施する際の始め方について紹介します。

音楽療法と発達障害丨発達支援につながる音楽療法の始め方

発達障がい者と一緒に歌を歌う

まずは発達障がい者と一緒に歌を歌って見てください。

すると、発達障がい者の苦手分野の1つ「コミュニケーション」の部分に好影響を及ぼすことができるようになります。

理由は以下の通りです。

理由①人と視線を合わせる練習になるから

音楽は人と視線を合わせる練習になるのです。

発達障がい者の特徴の1つに「人と話をするのは嫌いではないけれど、相手と視線を合わせることができない」ことが挙げられています。

何故こうなってしまうのかという理由としては「人との距離感を掴むことが苦手だから」ということがあります。それ故にコミュニケーションの場においても、相手に不信感を与えてしまい、あらぬ誤解を受けさせることにもなるのです。

音楽療法はそんな誤解を防ぐ訓練の場にもなります。理由は以下の通りです。

  • 視線⇒歌を教える側を向いて歌うのが基本なので、一定時間、視線を固定させる訓練になる。
  • 距離感⇒歌を教える側と学ぶ側には、ある程度踏み込んではいけない領域があることを、肌で実感できる。

このように音楽療法を用いれば、コミュニケーションにおける「暗黙のルール」がわかりやすく理解できます。

理由②発声・発語がしやすくなる

歌は発声と発語の力を促す訓練の場になります。

発達障がい者は、言葉を上手くコントロールできない割合が高いです。

理由は言語発達が人より遅れやすい傾向にあったり、発音そのものに問題があったりするからです。

このようなコンプレックスから声を出すことが億劫となり、会話そのものを避けてしまう可能性があります。

そこで効果的なのが音楽療法です。

半ば強引な手段になりますが、当事者に声を出す機会を与えることができます。しかも、教える側と一緒になって歌うことで、連帯意識を持たせる良いきっかけ作りにもなるのです。

更に、多少の言葉での遅れがあっても、メロディーとリズムでカバーできる所もあるので、不安を抱かせずにすみます。

そしてゆくゆくは自発的に声を出して、人とコミュニケーションを取れる可能性があるのです。

理由③感情を制御できるようになる

歌を歌うことで、急激な感情の発生を抑えることができます。

発達障がい者は、感情の抑制をするのが困難な人が多いです。

そしてそのことが原因となり、コミュニケーションの場で他人に対して、感情のおもむくままに当たり散らしてしまうケースも少なくありません。

そこで音楽療法の出番です。

歌を歌うことで「自律神経」の1つ「副交感神経」が刺激されます。副交感神経はリラックスしているときに活発になり「心と身体を休息・安静状態にする」効果を働かせるのです。

また「しあわせホルモン」と呼ばれる以下の物質を分泌させます。

  • セロトニン⇒精神に安定をもたらし、直観力を上げ、脳の働きを活性化させる。
  • ドーパミン⇒やる気や幸福感を得られる。運動や学習、感情と意欲に好影響を与える。
  • エンドルフィン⇒ストレス等に対する鎮痛、鎮静効果をもたらす。多幸感がある。

社会生活おけるコミュニケーション面のハンデは、歌うことで軽減できる可能性を秘めています。

発達障がい者と一緒に楽器演奏をする

歌を歌う以外にも、楽器演奏の場面でもコミュニケーションに好影響を与えることが判明しています。

理由は2つあります。

理由①人と触れ合う喜びを知る

楽器演奏は人と触れ合う喜びを知る絶好の場なのです。

発達障がい者がコミュニケーションで困る理由の1つに、「関係性の不理解」があります。これは、人とどのようにすれば良好な関係を築けるのか分からず、焦ってしまう状態を指します。

そんな問題に対して、楽器演奏では何ができるのでしょうか。

楽器演奏の場は、それぞれが違う楽器を使って演奏することがあります。その際には、誰がどんな楽器を担当し、どのパートを演奏するのかを理解しておく必要があります。

音楽を通して、互いに切磋琢磨していくことで、人と触れ合う喜びを知ることができるのです。

時には衝突することもありますが、それを乗り越えた先に得ることができる達成感は充実したものになるでしょう。

理由②人と協力する大切さを知る

楽器を演奏することで、人と協力する大切さを知ることができます。

発達障がい者はその特性上、意思疎通が上手くできないため、対人関係の構築に問題が生じやすいのです。

よって、そのことがネックとなり、他者との関りを避けてしまいがちになってしまいます。

しかし、楽器演奏は、そんな悩みを解決する糸口を見つけることができるのです。

1人でやる演奏と違い、複数でやる場合だと、守らなければならないルールがあることに気付きます。

  • 勝手なタイミングで動いてはいけない。
  • 周囲の出方を伺う必要がある。
  • 音を合わせる場面があることに気付く。

最初は戸惑うことかと思います。しかし、これらのルールを守り、1つの演奏が完成できた喜びを知ることで、他者協力の大切さと喜びを学べる見込みがあるのです。

自分の殻を破るための手助けとして活用しよう

発達支援に繋がる音楽療法の始め方を、歌と演奏の視点から見ていきました。

音楽療法の効果の1つに「自発性と活動性の促進」があります。

自分が抱える障がいのせいで、劣等感を抱き、自分の殻に閉じこもりがちになってしまう。そんな人達の心のケアをし、支援を行っていくのも、音楽療法の役目でもあります。

発達障がいに関わっている人達がこの記事を読んで、音楽療法によるアプローチを検討し、より良い結果を出せるように願っております。