「放課後等デイサービス」は「発達障がい」を患っている人達を助けるために設けられた福祉サービスです。
発達障がいとは、脳の機能障害によって様々な症状や困りごとを抱えている人達のことを指す言葉です。日本では、10人に1人が発達障がい者だと言われています。
放課後等デイサービスは、6~18歳までの障害を抱えていたり、発達に特性のある子ども達のためのサポートをすることが目的です。
その内容は「自立支援活動・余暇活動の提供・創作活動」の多岐に渡っています。
そして、昨今では3つの活動全ての要素を取り入れた「音楽療法」と呼ばれるものが注目されているのです。
「聴く・歌う・演奏する」等を通して、対象者が抱えている困りごとを改善したり、より良い生活を送れることができるようにアプローチする療法のことを指します。
今回の記事では音楽療法がもたらす効果について記します。
放課後等デイサービスで取り入れたい!発達障害を支える音楽療法の効果

音楽療法でできること①「情動」の抑制
音楽は自律神経のバランスを整え、情動を抑制する働きがあります。
情動とは急に怒ったり、暴れたり、泣いたりするような一時的で急激な感情を指す言葉です。
発達障がい児は情動の抑制が難しく、それによって意思疎通が困難となり対人コミュニケーションの場で大きなハンデを被っています。
しかし、音楽は情動を上手くコントロールする力があります。
音楽が情動をコントロールする仕組みは「自律神経」にある
情動をコントロールできる鍵は自律神経にあります。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」で成り立っています。
交感神経は「心と体を活動状態にする」働きを持ち、副交感神経は「心と体を休息・安静状態にする」働きを持ちます。音楽はこの2つの神経のバランスを整える力があるのです。
自律神経のバランスが整うと、情動が抑制されやすくなり、突発的な行動が減少されるとも言われています。更には自律神経の乱れによる身体の器官不調を防ぐことにも繋がるのです。
音楽療法でできること②「集団意識」を芽生えさせる
音楽には、集団や組織の場で生きていく際に必要となる「集団意識」に呼びかける力があります。
発達障がい者は、人との距離感が掴めなかったり、足並みの揃え方が分からないことが原因で中々集団に馴染めなかったりします。
人の心の内を想像することが苦手なので、何気ない一言のせいで、争いになることがあるのです。
集団意識が芽生えるのは「コミュニティ」を意識するようになるから
集団意識の要となるのはコミュニティにあります。
音楽の「合唱」は、他の子どもと一緒に音楽活動をすることで、集団の中で行動するときに必要となる力を芽生えさせる可能性を秘めています。
合唱を通して、発達障がい者達は、1人の時と違って大勢の人間で音楽をやるとなったら必然的に守らなければならないルールがあることを実感し、学んでいきます。
「人と合わせなくてはならない」「人に迷惑をかけてはいけない」「ふざけてはいけない」
こういったルールを学び、ゆくゆくは自然と守れるようになっていくのです。
音楽療法でできること③発声・発語の促進
音楽は人間が持つ「認知機能」における「言語理解」の分野に好影響を与えます。
発達障がいを抱える人の中によく見られる特徴に言語発達の遅れや発音調整の不得意等が挙げられています。言葉を上手くコントロールできないが故に、人とのコミュニケーションが取れず苦労しているのです。
しかし、音楽はそんな問題に対して突破口を開けるのです。
言語理解分野を刺激することで発声・発語機能を促進させる
音楽には、発声や発語を無理に教わるのではなく、音楽という一種の遊びの場を通して学ぶことで、意欲を増し、成長へと繋げていける力があります。
言語理解とは、相手の話している文字を「言葉」として捉え、それに対してこちらも言葉を用いて意思を伝えようとするものです。
この一連の流れは音楽に当てはめて考えることができます。
音楽を聴く。その際、人は音楽をただの音の塊ではなく、言葉として捉え、意味のあるものだと考えます。そして、聴いた歌詞を言葉にして「歌う」のです。
誰に教わったわけではなく、自分から自発的に動けたことに意味があるのです。
子ども達1人1人が抱える問題や目標をしっかり立てて実践する

発達障がいを支える音楽療法を3つの側面から見ていきました。精神的、肉体的に大きな影響があることが分かったでしょう。
あとは、子ども達1人1人が抱える問題や目標をしっかり立てた上で、実践していくだけです。
音楽療法をただの「遊び」として終わらせるのではなく、ちゃんと実りのある取り組みとして扱い、実践していくことが意義のあるものなのです。